間違いだらけの腹筋

運動

たまには真面目に筋トレの話でもしましょう。

「もっと具体的な肉体改造の話をしてくれよ」という声がそろそろ聞こえてきそうな気がしたので、久しぶりに筋トレ記事を書いてみようと思いました。

それで、今回は一先ずニーズが高そうで、しかも多くの人が間違えている腹筋の鍛え方について言及してみようと思います。

腹筋は6パックという見た目先行に走る事で誤った方法を続けてしまっている人が多いです。

その結果、腰痛と隣り合わせの非常に楽しくないトレーニングをしている人が後を絶ちません。

しかし、正しい解剖学の知識を持ち合せておけば、そんな不自然な事は起こらず、気持ち良く、効率的に腹筋を鍛える事が可能です。

見た目を美しくするのは勿論、安全性や実用性まで考慮して、腹筋を鍛えていきたい方は今回の記事を参考にしてみて下さい。

悲劇のシットアップ

腹筋を鍛えようと決心した時、多くの人が行うのはシットアップだと思います。

「腹筋=シットアップ」みたいな認識ありますよね。

これはこれで別に悪いわけでは無いのですが、実は致命的な間違いを犯している人がかなりいます。

それは何かと言うと、背中を丸める事です。

体を起こし上げていく際にクルクルっという感じで背中を丸めていく人が結構多いのです。

シットアップ腰椎主導

このやり方は有名なトレーナーの方達も推奨していてお腹が割れやすいという触れ込みで広まっているのですが、実はこれを繰り返していると腰が崩壊します。

経験者も多いのではないでしょうか?

「よーし、今年は腹筋割るぞ!」と気合いを入れて、背中を丸めて腹筋しまくった結果、腰痛が酷くなって途中で挫折という黄金パターン。

このやり方は間違い無く腰を壊します。

何故なら、正しい体の使い方ではないからです。

ちょっと込み入った話になりますが、シットアップのような体を折り畳む動作は腹直筋だけではなく、大腰筋という筋肉が作用しています。

大腰筋はこれまでに何度も説明してきているのでそろそろ頭に入ってきた方も多いと思いますが、腰と太腿を繋ぐインナーマッスルです。

大腰筋※「筋肉の基本と仕組み」抜粋

腰に繋がっているわけですから、体を起こすシットアップで腰を曲げた時に自然と使われるのはわかると思います。

しかし、ここで重大な注意事項があります。

大腰筋は腰だけで動かすものではありません。

先程、腰と太腿を繋ぐ筋肉だと言った事からわかる通り、大腰筋は腰だけでなく太腿も動かすよう設計されています。

正確に言えば、腰椎を使って腰を曲げる動作と、股関節を使って太腿を上げる動作が混ざるものです。

しかしながら、背中を丸めるようなシットアップをすると、腰側の収縮率が異常に高まって股関節が手薄になり、腰椎のみで大腰筋を動かす事になってしまうのです。

この状態を「一部収縮」と言います。

本来は腰椎と股関節の「全体」として収縮すべきなのに腰椎という一部のみで収縮が起こってしまった状態です。

そしてこの一部収縮が続くと、体は警告を発します。

人間の体はよくできていて、一部収縮のようにおかしな体の使われ方をされると必ず警告が出るようになっています。

どんな警告かと言えば、「攣る(つる)」という現象です。

攣るのは「こむら返り」で有名だと思いますが、あれはふくらぎの筋肉が一部収縮する事で起こります。

そして、今回のように背中を丸めたシットアップをしていると、大腰筋も一部収縮を起こして攣ります。

それが「ギックリ腰」という状態です。

以前、腰痛は大腰筋が硬直化で起こると言いましたが、別の言い方をすると大腰筋が攣ったという事なのです。

こういった理由がある事から背中を丸めるようなシットアップは避けた方が良いと思っています。

そもそも冷静に考えれば背中を丸めるというのは腰痛の最大の原因となる猫背を作っているわけです。

そんな運動を繰り返していれば腰が壊れるのは必然の事態だという事はわかると思います。

やるなら姿勢はなるべく正して、股関節に意識を入れて太腿を上げるつもりで体を起こしてみて下さい。

シットアップ股関節主導

腰椎を曲げるというよりも、股関節を曲げる感覚で上体を起こします。

そうすれば腰痛のリスクは最小になります。

腰椎と股関節

せっかくなのでもう一歩踏み込んでおきますが、大腰筋は股関節メインで動くべき筋肉です。

腰椎と股関節の両方で使われると言いましたが、そこには比重があり、圧倒的に股関節に重きをおいて使うべき筋肉である事を覚えておいて下さい。

何故、股関節メインなのかと言えばそれはシンプルな事で、人間の体というのは股関節をよく動かすよう設計されていて、逆に腰椎は余り動かさないように設計されているからです。

股関節はあらゆる関節の中で最も可動域が高く上下前後左右様々な方向に回転させる事ができます。

更には大腰筋、腸骨筋、大腿四頭筋、大殿筋、大腿二頭筋、内転筋、恥骨金、梨状筋、縫工筋など数えきれない程の強靭な筋肉に支えられた関節です。

股関節は非常によく動く事を前提にされた関節なのです。

一方で、腰椎というのは人体の中心です。

上半身と下半身の接点でもあり、体幹中の体幹と言えるポイントです。

そんな大事な場所をグニャグニャ動かしていたらそれこそ体幹がブレて上半身と下半身は連動性を失い、人間の本来の機能を損なってしまいかねません。

腰はできるだけ真っ直ぐであるべきなのです。

そう言えば腰はシットアップだけでなく、ベントオーバーローイングで壊す人も多いですが、これも結局は不自然な腰の屈曲が問題です。

バーベルローイングストレッチ

こんな腰を曲げたような態勢をキープするのは人間の体としておかしいのです。

しかも、高重量で更に負荷をかけるのだから腰が悲鳴を上げるのは明白です。

背中を鍛えるならなるべくデッドリフトがいいと思います。

デッドリフト

初心者からするとデッドリフトも腰椎主導の運動に見えてしまうかもしれませんが、正確に行うと股関節主導の運動になります。

腰を曲げる動作は実はほんの一瞬だけであり、その屈曲率も低くく、非常に安全性が高いのです。

これもまた余談になってしまうのですが、ボクシングで腰を痛める人もかなり多くて、その原因もやはり腰の扱い方にあると思います。

僕自身もボクシング経験者なのでわかりますが、ボクシングではスウェイバックやダッキングなど腰椎を頻繁に曲げる動きが多くあります。

腰を軸に上半身をブンブン振り回すわけですが、それが一部収縮を加速して腰を攣らせてしまうのです。

一方、同じ格闘技でも剣道をやっている人に腰痛持ちはほとんど見かけません。

それは腰を曲げる動作がほぼ無いからです。

僕は剣道もやっていた事があるのですが、剣道はボクシングと違って腰椎を動かしません。

足の運び方はボクシングに近いところがあるのですが、剣道では「体捌き」と言って常に体全体で移動するのがお約束となっています。

腰を曲げて動く事は一切無くて、いつでも背筋が伸びている状態です。

ですから、腰痛になる人がほとんどおらず、90歳とかでも平気で続ける人が多いのだと思います。

この違いは恐らく歴史の長さでしょう。

近代スポーツのボクシングはまだまだ歴史が浅く、正しい体の動かし方という点では不十分なところがあるのだと思います。

それに比べて剣道は大昔から伝統的に続いてきた武道なので、人間のあるべき体の使い方を踏襲できているのだと思います。

今の北辰一刀流にはちょっと疑問を感じる部分はありますが、それでも他の近代スポーツや格闘技に比べると優れていると感じる部分が多々あります。

話が大分逸れてしまいましたが、ともかくシットアップは股関節主導でやってみる事です。

クランチも同じです。(やり辛いけど)

そうすれば、腰痛のリスクがかなり下がるはずです。

不毛なレッグレイズ

さて、シットアップはこの辺にして、もう1つの王道レッグレイズについても少し検討してみましょう。

レッグレイズ

レッグレイズはその名の通り、足を上げる動作ですから、シットアップとは逆に股関節メインで動かしやすいと思います。

そういう意味で、腰痛のリスクはずっと減ります。

但し、レッグレイズはまた別の問題があって、腹筋に効かせられていない人が非常に多いです。

どういう事かというと、腹筋ではなく大腰筋だけのトレーニングになってしまっているのです。

先程も言った通り、体を折り畳むような動作は腹直筋と大腰筋の両方が使われています。

この内、大腰筋は先程も言った通り、股関節の屈曲をメインに動かすものであり、レッグレイズではそれが自然とできます。

とろがどっこい、注意しなければいけないのは腹直筋は股関節とは関係無いという事です。

腹直筋は肋骨と恥骨を繋ぐ筋肉です。

腹直筋※「筋肉の基本と仕組み」抜粋

分かり易く言えば、「みぞおち」と「お股」を繋いでいます。

ですから、股関節を動かして足を上げても腹直筋には影響がありません。

大腰筋ばかりが使われる事になります。

よく「レッグレイズは腰のトレーニングにしかならない」と言う人がいますが、その理由は正にこれだと思います。

しかし、実際にはレッグレイズでも腹筋は鍛えられます。

筋肉の仕組みを理解して正しいフォームで行えば、レッグレイズで十分に腹直筋に刺激を与える事は可能です。

どうすればいいのかと言えば、先程お見せした筋肉の構造を考えれば簡単です。

腹直筋は恥骨に繋がっていましたが、恥骨というのは骨盤の一部です。

つまり、腹直筋は骨盤を動かす事で鍛えられます。

という事は、レッグレイズでは股関節と同時に骨盤を動かすようにすれば腹筋に効くという事です。

これを説明するのに一番分かり易いのはベンチを使った腰落としレッグレイズです。

以前、動画でもお見せした事がありますが、ベンチに寝て尻を放り出してしまった状態でレッグレイズをします。

腰落としレッグレイズ

こうすると、足を降ろした時に自然と骨盤が下がり、足を上げた時には骨盤が上がるようになるので腹筋に強い刺激が与えられるのです。

もっと言えば、足を上げる際に骨盤をずっと上の方まで持っていけると可動域が上がって更に効くようになります。

レッグレイズ上まで

但し、余り上げ過ぎると腰が曲がってしまいます。

それを回避するには姿勢を伸ばした状態で肩甲骨を起点にレッグレイズする必要があるのですが、それを突き詰めると結局ドラゴンフラッグになります。

ドラゴンフラッグ

ただ、これは上級者にしかできないと思うので、まずは普通のレッグレイズで骨盤の上げ下げを意識するところから始めるのが良いと思います。

勿論、ベンチが無くても構いません。

足を上げ下げするのではなく、骨盤を上げ下げできれば大丈夫です。

そもそもとレッグレイズという言葉が罠なので、これからは骨盤レイズのつもりで取り組んでみて下さい。

アブローラーはどうなのか?

さて、他に腹筋と言えば、「コロコロ」があると思います。

アブローラー

正式には「アブローラー」と言う名称だと思いますが、腹筋トレーニングとしてはかなり有名ですよね。

個人的に、コロコロは優れていると思っています。

ここまでの話を理解してもらえればわかりますが、腰への負担が少なく、腹筋への刺激も強いです。

見てわかる通り、コロコロでは腰椎が余り曲がりません。

立ちコロ収縮 立ちコロ伸張

背筋はピンとしたままで、動いているのは股関節です。

ですから、大腰筋に一部収縮が起こるような事は無く、腰痛になる心配はかなり低いと思っています。

更に、股関節を動かす際に骨盤も十分に前後します。

恥骨金と繋がる腹直筋が伸び縮みする事ができて、十分な刺激が行くようになっているのです。

勿論、これも背中を丸めてしまえば腰を痛めるだろうし、逆に反ってしまうと腹筋にも効かなくなると思いますが、概ね普通の感覚でやっていれば問題無い気がしています。

このコロコロ、立ってできると一番いいですが、これは中上級者のレベルになると思いますので最初は膝をついてやってみて下さい。

膝コロ

膝コロで連続50回くらいできるようになれば立ちコロも1回位はできるようになると思います。

という事で、今日は腹筋のあれこれを述べてみました。

主に怪我との兼ね合いを重視しながら話しましたが、プロのトレーナーでもこういう話を知らない人は多く慢性腰痛を抱えている方はたくさんいます。

「腹筋には腰痛が付き物だ」という人もいますが、あるべき正しい動作であればそんな事にはならないので、しっかり体の声に耳を傾けて実践してみて下さい。

それでは今日はこの辺で。

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コメント

    • SATO
    • 2017.01.30 10:55am

    ワンダーコアを朝晩1年間(時間は短いですけど)続けてましたが、定期的にぎっくり腰になっていました。ロードバイクも趣味なので、そのせいかと思っていましたが、確かに丸まった動作でやっていました(説明ビデオのとおり。股関節の屈伸を意識して、丸めた動作を止めてみます。大変参考になりました。

    • 流れ者へ
    • 2017.01.17 8:58pm

    むしろスラスラ読めたんですが、、、
    頭まで筋肉で出来てるのでは?

    • Rinkiouhen
    • 2016.09.16 6:20pm

    シットアップは腸腰筋に効かせているとトレーナーさんから聞いたのに、先日買った本にはみごとな解説と写真で背中を丸めるとあり、混乱してこちらにお邪魔しました。とてもわかりやすく、最近腰が痛くなくなったのは、股関節を意識してシットアップができているからかなと思いました。ありがとうございました。

    • サムュエル
    • 2016.06.13 9:16am

    管理人様はスポーツトレーナーの資格はお持ちですか?

    • あかさ
    • 2015.11.18 12:16am

    これで長文とか笑

    • キン肉マン
    • 2015.09.23 10:42pm

    丁度腹筋を鍛える際の腰痛(お尻の割れ目の上辺り)に悩んでいたので参考になりました

    • 流れ者
    • 2015.09.20 1:11am

    長文すぎて読む気なくなりました。もうちょっとカテゴライズしたほうがいいですよ。

黒羽根雄大黒羽根雄大

物理学専攻・元プログラマー、体を壊して仙人を目指す事になりました。

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