「視力を上げる方法はありませんか?」
これ系の質問をよく頂きます。
特に健康に気を使っている人から聞かれる事が多いです。
「安全な食を心掛け、運動習慣もあるのだけれど、目が一向に良くなる気配が無いんです…」
「体調は良く、肌荒れも無く、体型も維持できているけど、目だけは悪くなる一方なんです…」
こんな感じの相談です。
確かに、食生活には相当気を配っているのに、視力が良くない人は多いです。
メガネやコンタクトは勿論、視力検査で0.1も無い人はザラにいると思います。
体調が良ければ目は気にしないという方もいますが、気になる人もいますよね。
せっかく健康的な体を目指して努力しているのだから、視力も上げて行きたいと思うのは当然の事だと思います。
先に言うと、視力自体はトレーニングで上げられます。
近視・遠視・乱視・老眼、どれも改善していく事が出来ます。
もっと言えば、白内障・緑内障・網膜剥離・黄斑変性など目の病気も全て同様のトレーニングで改善する事が出来ます。
ただ、今回はこの話をしたいわけではありません。
もっとそれ以前の問題として、「視力が低いのはそんなに問題か?」という事を話してみたいと思います。
そもそも視力って何だっけ?
視力は私生活にどれだけ影響があるの?
視力はスポーツ競技に必要不可欠なの?
こういう根本的で現実的な視力に関する大前提の話をします。
漠然と視力を高めたいと思って行動していると、自分の望むゴールと全く別の場所に着地してしまう事があるので、良かったら見ていって下さい。
2つの視野
最初に知っておいてもらいたいのは、視力には2種類あるという事です。
それは、
- 中心視野
- 周辺視野
です。
中心視野とは色とか形に反応するもので、物を正確に把握する視力です。
例えば、文字を正確に読むのはまさにこれですね。
一方、周辺視野は動きに反応するもので、視界に入ったものを漠然と捉える視力です。
例えば車の運転中、急に歩行者が飛び出して来た時、それにいち早く気付ける能力はこちらになります。
そして、この2つを合わせて視力と言います。
しかし、もうお分かりかの通り、視力検査でわかるのは中心視野の方です。
この検査では周辺視野はわかりません。
そもそも中心視野は1つの物に集中してピントを合わせるため、その時の周辺視野は逆に狭くなっていきます。
中心視野と周辺視野はトレードオフになりやすく、2つの視力を同時に測定する事は出来ないのです。
まずはこの事を理解しておいて下さい。
スポーツと視野
中心視野と周辺視野、どちらも良いにこした事はありませんが、どちらがより重要かと言えば、どうでしょう?
スポーツで考えるとわかりやすいと思います。
例えば、サッカーはボールを追い続けなければいけませんが、この時に必要となるのは当然、周辺視野です。
広大なフィールドの中でボールを発見したり、猛スピードで動くボールを一瞬で捉えるためには、周辺視野が必要な事がわかると思います。
一方で、中心視野が役立つ事はほとんどありません。
例えば、ボールの模様を正確に把握できたところで、競技には何のメリットもありませんよね。
野球でも、ピッチャーが投げるボールの縫い目がハッキリ見えても、それが何かの役に立つかと言うと、多分無いと思います。
それよりも、ボールの動きの変化に付いていく事が重要であり、やはり中心視野より周辺視野の方が活躍の場が多いです。
今言ったようにフィールド系の競技は特にわかりやすいですが、スポーツ全般、周辺視野の方が優先度が高い傾向にあると思います。
ですので、運動において視力検査の良し悪しは余り関係がありません。
逆に、周辺視野が弱いのは致命的になる事が多いので、視力を高めるなら中心視野ではなく、周辺視野という事になります。
勿論、周辺視野はトレーニングで鍛えていく事が出来ます。
尚、ボルダリングのように岩の形状と距離を正確に把握するために中心視野の方が重要になるスポーツもありますので、一概に言える事ではない事はご承知下さい。
日常生活と視野
では、日常生活ではどちらが重要でしょうか?
これはスポーツほどハッキリしませんが、やはり周辺視野だと思います。
先ほど、運転の例を出しましたが、危険にいち早く気付ける力が周辺視野だからです。
不審者が近寄って来た時、それに気付けるのも、不意に何かが飛んできた時、それをかわせるのも、周辺視野にかかって来ます。
つまり、周辺視野はリスク回避に役立つのです。
これは動物の視力にもそのまま当てはまり、草食動物は基本的に周辺視野が優れています。
目が横に付いている事から想像できると思いますが、草食動物は周辺視野を高める事で捕食者の動きを察知しています。
逆に、肉食動物は中心視野が優れています。
目が前に付いているのは獲物にピントを合わせやすいためで、遠くからでも正確にターゲットと、その距離を把握するために視力を使っています。
ちなみに、カエルは周辺視野しかないみたいです。
カエルは捕食者でもあり、被食者でもありますが、やはり食べるより食べられない事を優先しているのだと思います。
目の位置で考えると人間は中心視野に向いてそうですが、食べ物に困らなくなった飽食の現代、その重要性は失われつつあります。
中心視野が悪いからと言って、命の危険に晒される事はほぼありません。
周辺視野が悪いと事故に会う確率が上がってしまいますが、視力検査が0.01の裸眼でも平穏無事に生きる事が出来てしまうのです。
ただ、今でも1つだけ日常生活で中心視野が重視される時があります。
文字を読む時です。
ホモサピエンスならではですが、これを裸眼でクリアしたい人は中心視野を高めるトレーニングが必要になります。
感覚統合
視力に関して補足しておきたい事があります。
視力は視覚という五感の1つを担いますが、感覚統合という言葉があるように五感は全てを統合してバランス良く使えている事が大事です。
例えば、視力が良くても、視覚に頼り過ぎている人は酔いを起こしやすくなります。
酔いは視覚と体性感覚の情報がズレている時に起こりますが、視力が高い人ほど陥りやすいので注意が必要です。
ご自身が視覚に頼り過ぎているかどうかは、
目を閉じて片脚立ちが出来るか?
目を閉じて真っ直ぐ歩けるか?
などでわかるので良かったら試してみて下さい。
また、これと関連して動体視力というものもあります。
視覚情報に対して体がいかに素早く正確に反応できるかの能力ですが、主に周辺視野と連動する大事な機能です。
例えば、サッカーでせっかくボールの動きを目で捉えられていても、体がそれに追いついて来なければ意味がありませんよね。
もしくは、運転中に飛び出して来た歩行者を目で察知できたとしても、ハンドルやペダルを動かせなければ結局は轢いてしまいます。
年を重ねるとこの能力は落ちる傾向にありますので、アクセルとブレーキを間違えるなんて事故も起こり兼ねません。
現実問題として、視力は体と連動させて使う事が多いので、この能力のトレーニングは欠かせないと思っています。
結論
色々とお話して来ましたが、最後にタイトルを回収しましょう。
「視力が低いのは問題か?」
中心視野であれば、そんなに問題ではありません。
しかし、周辺視野であれば、問題だと思います。
また、視力は他の感覚との統合が重要であり、単純に視力が高いからと言って、問題が無いわけではありません。
ちょっと複雑になりましたが、これが回答です。
視力は意外と奥が深いので、単純な視力検査だけに囚われず、自分の望むものを明確にして、そのための努力をしていって下さい。
それでは今日はこの辺で。
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