デスクワークが体に悪いという話も大分広まって来ていると思います。
特に腰痛と絡めて話される事が多く、こんなデータも出ています。
各姿勢における腰への負担度合が示されており、立っている時を100としたら、座っている時は姿勢が良くて140、悪いと200近くになっています。
座位というのは立位に比べて腰への負担が大きいのがわかると思いますが、それを1日8時間以上続けていたら、腰を痛めるのは当然です。
こうした事に早くから気付いた人達は既に対策を取り始め、今では立ってパソコン作業をする人も出て来ましたし、そうした環境を推奨する会社も出て来ています。
個人的には立って運転できる車が欲しいと思ったりしますが、どこか検討されているメーカーはないんですかね…
それはさておき、デスクワークは腰へのリスクがあります。
しかし、デスクワークの被害はそれだけではありません。
他の部位にも様々な実害を起こす事がわかっています。
今日はその話をしたいと思います。
座った状態で固まっていると、体にどのような異変が起こるのか、解剖学的な観点から指摘して行きます。
最近はデスクワークを第二の煙草と揶揄する人も出て来ており、30分のデスクワークは1本の煙草に相当すると言う人もいますので、興味ある方は是非見ていって下さい。
お尻が使えなくなる
デスクワークのデメリット筆頭がこれです。
人体で最も強い力を発揮する大殿筋が使えなくなってしまいます。
座位というのは、基本的に股関節が屈曲した状態になりますが、この時、大殿筋は伸ばされている事になります。
要はストレッチがかかった状態です。
ストレッチというと聞こえはいいかもしれませんが、筋肉は伸ばされた状態で固定されると縮めにくくなります。
つまり、力が入らなくなります。
下半身を動かす際に最も頼れる存在のお尻が使えなくなるのです。
これは歩行、走行、しゃがみ、ジャンプなどの効率性を著しく下げ、日常動作からスポーツ動作までパフォーマンスダウンに繋がります。
また、お尻が使えないと下半身にかかる負荷が膝に集中し、膝痛を起こしやすくなります。
見た目的にもお尻が下に垂れてきて、短足になります。
お尻を鍛えようとスクワットを頑張ったとしても、太ももに効いてしまい、脚ばかりが太くなってしまいます。
そして、使われなくなった殿筋群は硬くなって股関節の柔軟性を妨げ、股関節と腰椎が一体化して腰痛の原因にもなります。
その他にも、お尻が硬くなると座骨神経を圧迫し、座骨神経痛を引き起こす事にもなります。
お尻は思っている以上に全身に影響があり、お尻が使えないという事は効率性も、健康面も、見た目も、全てに悪影響が出るのです。
過剰な伸長
座位で伸ばされっぱなしになる筋肉として、他に大腿四頭筋の外側広筋、内側広筋、中間広筋があります。
太もも前から膝下に付いている筋肉で、膝を曲げる時に伸ばされます。
当然、座っている時は伸びたままとなり、やはり硬くなって来ます。
膝に付着した筋肉が硬くなれば、膝付近で炎症を起こし膝痛に繋がります。
これらの筋肉はマッサージすると圧痛を伴う人が多く、多くの人が拘縮している事がわかります。
過剰な収縮
座位で伸ばされっぱなしの筋肉があれば、縮みっぱなしの筋肉もあります。
その1つが腸腰筋。
腸腰筋は股関節を屈曲させる働きがあり、座った姿勢をしていると縮みます。
そして、筋肉は縮んだ状態を続けても硬くなります。
腸腰筋が硬くなると鼠蹊部に詰まり感が出て可動域が狭くなったり、脚を上げる動作で攣ってしまったりします。
また、腸腰筋は腰椎に付着しているため、腰痛の直接的な原因にもなります。
他にも縮みっぱなしになる筋肉として、大腿筋膜張筋があります。
余り聞き慣れない筋肉かもしれませんが、太もも横に位置し、腸腰筋と同様に股関節を屈曲させる働きがあります。
大腿筋膜張筋が硬くなると、骨盤前部を下げて反り腰が形成されます。
反り腰は背骨の筋肉の圧迫に繋がり、やはり腰痛のリスクを高めます。
他に膝関節側で縮みっぱなしになる筋肉として、腓腹筋があります。
膝裏からふくらはぎに付いていて、膝を曲げる働きがあります。
椅子に座っている時は膝が曲がりっぱなしになりますので、腓腹筋は常に収縮状態が続いてやはり硬くなります。
腓腹筋が硬くなると膝裏が突っ張って、前屈などが難しくなります。
また、こむら返りの原因にもなります。
更に、下半身の血液が戻って来れなくなって、冷え性を引き起こします。
他にも縮みっぱなしの筋肉としては薄筋や縫工筋などもあります。
キリが無いので説明は割愛しますが、いずれも下半身の柔軟性を著しく落とします。
過剰な圧迫
座位は筋肉の収縮や伸長とはまた別の問題もあります。
それは長時間の圧迫です。
椅子に座っている間はハムストリングや内転筋が、上半身の体重を常に受け続ける事になります。
これはずっと正座しているのと近い状態です。
正座をしていると、ふくらはぎが痺れて辛くなると思いますが、座位ではハムストリングや内転筋にも同じような事が起こっています。
その事に気付かないで無理に圧迫を続けていれば、やはり筋肉は硬化し、下半身の柔軟性を著しく阻害する事になります。
開脚が苦手という人はこれが原因である事が多いです。
また、こうした筋肉は座骨神経の圧迫にも繋がっていくため、座骨神経痛を悪化させる原因にもなります。
という感じで、長時間座った姿勢でいるという事は、思いの他、健康面に悪影響を及ぼします。
しかも、今言ったのは良い姿勢で座れていればの話です。
悪い姿勢で座っていたら、もっと問題が出て来ます。
よくあるのは、腹圧が弱くて常に背もたれにもたれかかったような座り方です。
これを続けていけば、腰椎に過度な圧がかかり、骨レベルで腰痛を起こします。
それでも止めなければ、腰椎が曲がったままで固定されて不可逆となり、将来は杖をつかなくては歩けなくなる可能性が高くなると思います。
椅子とは今の内から真剣に向き合っておかないと、取り返しのつかない事になりかねないのです。
ちなみに、スペースの関係で詳しい話は省略しますが、パソコン作業をする方はディスプレイとキーボードの位置によって首、肩、手首の筋肉が拘縮し、可動域の低下や慢性的な痛みに繋がりますので、この辺も注意が必要です。
デスクワーク対策
ではどのような対策を取るべきでしょうか?
まずは椅子に座る時間を短くする事です。
ただ、これに関して以前は10分座ったら1度立つ事を推奨してましたが、それだとほとんどの人は忘れてしまう事がわかりました。
やはり環境そのものを変える必要があります。
デスクワークの方も立位でパソコン作業などができるよう机の上に作業台などを置いたりする事を検討してみて下さい。
幸いにも今ではパソコンスタンドというもの豊富に売ってますし、中には高さを調節できるような高機能のものもあります。
デスクワークもちょっとした工夫で立ち仕事に変えられます。
勿論、常に立っている必要はありません。
立ち続けるのも疲れるので、そうなったら座り、回復したらまた立ち、という感じで立ったり座ったりを繰り返します。
そうすれば、筋肉の過剰な収縮や伸長、そして椅子からの圧迫を避けられるようになり、姿勢の歪みもすぐに戻せるはずです。
もう1つ重要なのは定期的に体をメンテナンスする事。
いくら最善の環境に整える事ができたとしても、デスクワークが続けば体は少しずつ硬くなって来ます。
それをリセットできるよう定期的に筋肉のメンテナンスをしてあげて下さい。
具体的には筋膜リリースと呼ばれるようなものです。
自分でやるのが面倒だったり、自身が無いという方は、リリースのできるトレーナーや整体師などに外注するのがいいと思います。
ここにかける時間やお金を渋っていると、後々泣く事になります。
そして最後に、座るにしても良い姿勢でい続けられるよう体幹トレーニングを習慣付ける事です。
正しい呼吸で腹圧がしっかりかかるようになれば、姿勢は前傾や後傾せず、自然と真っすぐ立つようになります。
そうすれば、座位の状態での腰の負担も最小限に抑えられ、長期的に丈夫な体を維持しやすくなるはずです。
という事で今回はデスクワークの危険性とその対処法について書いてみました。
少しでも参考になれば幸いです。
今回の記事もとても参考になりました。テレワークを立ってできないか検討してみます。余談ですが、立って運転する車ができれば体にも良いし、居眠り運転も減るかもしれませんね。