アミノ酸の技法

食事

今回はよく頂く質問の中から抜粋して、アミノ酸の摂取方法について書いてみたいと思います。

以前、プロテインとの使い分けをお伝えした事がありますが、アミノ酸のサプリメントの大きな特徴は、筋トレ「前」や筋トレ「中」に飲める事が挙げられます。

つまり、高負荷というハードなトレーニングに対して事前に準備する事ができ、その負担を和らげたり、筋肉の分解を防いだりする事ができます。

高負荷トレはパフォーマンスを上げたり、回復を速めたりと考える事が多く、様々なタイミングで飲用できるアミノ酸は使い勝手が良かったりするわけです。

それではどういう風にアミノ酸を飲むのか?

アミノ酸はプロテインと比べて使い方が複雑で難しい特徴があります。

マニュアル運転のようなものと表現した事がありますが、応用力が効く反面、手軽さや手堅さが無いからです。

そこで、今回は難しいアミノ酸の摂取方法の中でも最もシンプルで幅広く普遍的に使えるであろう「筋トレ前」「筋トレ中」「筋トレ後」に分けたアミノ酸の摂取方法をお伝えしたいと思います。

これで完璧というわけでは無いのですが、概ねこのスタイルを持ち合わせておけば筋トレの効果を効率良く引き伸ばせるはずです。

筋トレ前

ここで必要なのは「BCAA」です。

正式名称は分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acids)。

そこそこ有名ではありますが、必須アミノ酸の「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の3つの事を差します。

BCAAは総アミノ酸量の35%を占め、筋肉を構成するタンパク質に多く含まれます。

そして、筋肉の分解時には、最初に使われるものでもあります。

以前にもお話した事がありますが、筋トレを開始するとすぐにエネルギー源確保のために筋肉の分解が始まります。

運動によりBCKDHという酵素が活発になり、BCAAの分解が促進されるのです。

筋肉が付きづらい人はこの作用が激しく、合成と分解の比率が近くなってしまうために目覚ましい筋肥大が起こりません。

トレーニングによっては分解の方が勝ってしまって、逆に筋肉が細くなってしまう事もあります。

そこで出て来るのがBCAAのサプリメントです。

運動前にBCAAを予め外部から摂取しておく事で、筋肉の分解を有意に抑制できる事がわかっています。

これにより、合成が分解を大きく上回る事ができ、筋肥大を優位に進められます。

筋トレのサプリメントと言うと、「合成」ばかりに目がいきがちですが、実は「分解」をどう抑えるか考える方がずっと重要です。

特に分解作用は高齢者になる程著しくなるため、年輩の方にとって筋トレ前のBCAA摂取はお勧めでもあります。

ちなみに、BCAAのサプリメントは筋肉の回復速度も改善される事がわかっており、筋肉痛も緩和されます。

そういう意味では怪我のリスクが気になる高負荷トレーニングの安全性を高めてくれる働きもあると言えます。

筋トレ中

ここで飲むのが「クレアチン」です。

正確に言うとクレアチンはアミノ酸ではなく、「アルギニン」「グリシン」「メチオニン」の3種類のアミノ酸から合成される有機酸です。

ただ、ここではわかりやすいようにアミノ酸というカテゴリで話します。

また、本来は筋トレ中に限らず1日のどこでも好きなタイミングで摂取すれば構わないのですが、忘れる事が無いよう筋トレ中としました。

クレアチンは人間が最も大きな力を出す時に使われるエネルギー源です。

エネルギーと言うと糖質や脂肪を思い浮かべる方が多いと思いますが、フルパワー時にはクレアチンが使われています。

ただ、このクレアチン、パワーが大きい反面、持続時間が非常に短いという特徴があります。

その時間は約8秒。

筋トレで言うと最初の2~3回しか使えません。

その後は次にパワーの強い糖質がメインのエネルギーになり、それも枯渇すると持久系の脂肪がメインになっていくわけです。

さて、ここで言いたいのはサプリメントでクレアチンを摂取すると、その濃度が高まり、エネルギーの総和量が増えるという事です。

つまり、最大出力が上がって、持続時間が伸びます。

具体的に言えば、時間は10秒程度まで上がります。

これが起こるとどうなるかと言えば、例えば持ち上げられる負荷が上がります。

ベンチプレス50kgが限界だった人が、55kgを持ち上げられたりする事があります。

また、継続時間が伸びるため、ベンチプレス50kgで8回が限界だった人が、10回まで回数を増やせたりする事もあります。

つまり、運動パフォーマンスが上がるのです。

筋肥大には直接関係しませんが、筋トレそのものの効果が上がるため、間接的に筋肉の発達に繋がる可能性も秘めています。

特に、高負荷トレーニングはクレアチンを存分に使うため、その恩恵に預かれるというのは非常に重要です。

また、クレアチンを飲むと集中力もアップします。

エネルギー総和量が増えて筋肉が活発になっているため、トレーニング中の「飽き」や「嫌気」が減少します。

簡単に言えば、モチベーション高くなり、楽しくトレーニングできるようになるという事です。

但し、副作用がある事も報告されています。

クレアチンを摂取する事で代謝産物のクレアチニンが増大し、
尿量が増加して腎臓や心臓に負担がかかると言われています。

また、クレアチンは肝臓でも1日2g程度作られているのですが、自分で作る能力が落ちる可能性も示唆されています。

利用される方はこの辺を理解しておいて下さい。

筋トレ後

最後の筋トレ後には2つあります。

1つは「グルタミン」。

グルタミンは人体の中に最も多く存在し、筋肉の約6割を占めるアミノ酸です。

このグルタミン、筋肉の半分以上を占める事もあり、筋トレによってどんどん分解が起こっていきます。

先程、筋トレの開始と同時にBCAAの分解が始まると言いましたが、同じくグルタミンの分解も進みます。

ですから、BCAAと同様、筋肉の分解を防ぐという意味で、筋トレ後にグルタミンのサプリメントを摂取します。

「何故、BCAAと一緒に筋トレ前に飲まないのか?」

と思われるかもしれませんが、グルタミンはBCAAと違って必須アミノ酸ではないからです。

必須でないという事は、足りなくなると人体で勝手に合成されるので、筋トレを開始して暫くは枯渇するような事はありません。

ですから、そこまで過敏になって筋トレ前に飲む程では無いと思っています。

ただ、いくら必須でないとは言っても、激しい高負荷トレーニングの後は合成量が追い付かなるため、筋トレ後に補給出来ると嬉しいものです。

グルタミンは免疫増強効果がある事でも有名なので、風邪を引きやすいという方にとっては健康面での恩恵も預かれると思います。

2つ目に「EAA」+「SAA」。

EAAは正式名称「Essential Amino Acid」で、必須アミノ酸の事です。

体内で十分な量を合成できず、栄養分として摂取しなければならないものです。

先程のBCAAも含めて人間では9種類あります。

  • リジン
  • ロイシン
  • ヒスチジン
  • イソロイシン
  • バリン
  • スレオニン(トレオニン)
  • フェニルアラニン
  • メチオニン
  • トリプトファン

SAAは「Semiessential Amino Acid」で、準必須アミノ酸です。

成人では非必須ですが、幼児期では合成量が十分でなく、また不足しやすいために準必須と呼ばれます。

種類は3つ。

  • アルギニン
  • チロシン
  • システイン

筋トレ後はすぐに筋肉の合成が始まるため、その栄養分としてEAAとSAAを補充します。

非必須アミノ酸は人体で勝手に合成してくれるため、基本的には先程のグルタミンのみで大丈夫です。

外部依存となるEAAとSAAが何より重要です。

但し、EAAのトリプトファンは不要という説が一般的です。

その理由は、トリプトファンはチロシンと競合しやすい性質があり、眠りも促進するからというものです。

とは言え、トリプトファンも必要だと訴えている人達もいて、まだこの辺の議論は決着がつきそうもないので、自身で判断していってもらえたらと思います。

以上、アミノ酸の摂取法でした。

本格的なアスリートはもっと細かく設定しているものですが、初心者はまず今日の内容を実践すると良いのでは無いかと思います。

アミノ酸はなかなか複雑で難しいものがありますが、一度ハマれば大きな効果を出せるので興味あれば試してみて下さい。

それでは。

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黒羽根雄大黒羽根雄大

物理学専攻・元プログラマー、体を壊して仙人を目指す事になりました。

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