高負荷低レップ VS 低負荷高レップ

運動

久しぶりに真正面から筋トレの話をします。

最近コンサルをしていた時に、

「筋トレの成果が思うように伸びない」

という方のトレーニングを拝見した際、負荷とレップ数について感じるところがあったので、その事を綴ってみます。

内容はタイトルにも書いてある通り、高負荷低レップと低負荷高レップを比較した筋トレ効果の違いです。

肉体改造の成長が遅いと感じている方にとっては、大きなヒントになる可能性があると思いますので、是非とも読んでみて下さい。

また、レップ数は単に筋肥大だけでなく、健康やアンチエイジングとも関わってくる要素なので、そういう方向性から読んでもらっても良いと思います。

理論と現実

では最初に高負荷低レップと低負荷高レップのトレーニングを定義しておきます。

人によって様々とは思いますが、ここでは、

高負荷低レップ=5~10回で限界が来るトレーニング
低負荷高レップ=15回以上で限界が来るトレーニング

とさせて下さい。

この2つのトレーニング、科学的な立場で考えると、両方とも有効であると言えます。

どちらを採用しても筋肉は発達します。

前者は物理的な高負荷がかかる事により、体がそれに対応しようとして筋繊維が太くなります。

後者は血中に乳酸が溜まる事により(パンプ)、成長ホルモンが出て、やはり筋繊維が太くなります。

筋肉の部位によって多少の相性はあるもののどちらの方法も世界中の様々な研究で実証されており、理論的には両方とも同じような効果がある事がわかっています。

しかし、現実的に考えた場合、その効果は明確に異なってくると思っています。

結論から言いますが、単純な筋肥大だけを目的にする場合、高負荷低レップの方が結果としては順調に進みやすいです。

この事は疲労を3つの区分に分けて考えると理解しやすくなります。

3つの疲労

筋トレも含めて我々があらゆる運動する際には、次の3つの疲労がのしかかります。

1.骨格筋の疲労
2.心肺の疲労
3.脳の疲労

1の骨格筋とは我々が意識して動かせる筋肉の事ですが、ここでは筋トレでターゲットとしている筋肉の事だと考えて下さい。

ベンチプレスをするなら大胸筋、チンニングをするなら広背筋などです。

骨格筋が疲労すると物理的に、「これ以上は上がらない」という状況になります。

2の心肺はわかると思いますが、少し細かく言うと、心臓を動かす心筋と、肺を動かす横隔膜です。

心肺が疲労すると苦しくなってきて、「これ以上続けるのは困難」という状況になります。

3の脳は詳しく言うとキリがありませんので、ここでは漠然と脳と捉えて下さい。

その脳が疲労するとストレスが溜まってきて、「これ以上はやりたくない」という心理が発生します。

僕達が何かしら運動をする時には、この3つの疲労と付き合っている事を知っておいて下さい。

そして、ここで最も大事なのは、レップ数と疲労区分の広がりに相関関係があるという事です。

例えば、5~10回の低レップだと疲労は主に骨格筋だけで、心肺と脳はそれ程疲労しません。

息はそこまで切れないし、モチベーションもまだ続きます。

しかし、レップ数を10回以上に上げていくと、骨格筋に加えて心肺が疲労し始めます。

「ハァハァゼェゼェ」言うようになってきて、胸のあたりが苦しくなってきます。

更にレップ数を上げれば、脳の疲労も加わります。

モチベーションが保てなくなってきて、精神的に続けるのが嫌になってきます。

現実的な結果

このようにレップ数の上昇に伴い、疲労区分が広がるわけですが、これが原因で筋肥大は低レップが有効になってきます。

わかると思いますが、高レップを行って心肺と脳が疲労してくると、そちらの疲労感からトレーニングを中断する可能性が高まるためです。

ターゲットの骨格筋はまだ元気があるのに、途中で筋トレが終了してしまえば、積極的な筋肥大は起こりません。

筋肉は最後まで追い込んで始めて大きくなろうとします。

「どうやっても物理的にもう上がらない」という状況が成長のトリガーを引くのです。

しかし、心肺と脳の疲れから筋トレを中断してしまうと、ターゲットの骨格筋はまだ限界を迎えていませんから、「まだ余裕有り」と判断されて成長できないのです。

これは自重メインでやっている人が特に陥りがちな罠だとも思います。

自重では負荷設定が細かく出来ませんから、どうしても高レップになりがちです。

例えば、腕立て伏せ。

腕立て

運動不足でも10回程度はすぐ出来るようになるので、その後はレップ数を増やしていく事になります。

先程も言ったように科学的には高レップになったとしても、乳酸が蓄積する事で筋肥大は起こり続けるはずですが、現実的には心肺と脳の疲労がそれを邪魔します。

骨格筋が限界を迎える前に、息が上がってやる気が無くなり、途中で潰れてしまうのです。

この現象はレップ数が増える程、顕著になっていきます。

今、腕立て伏せがギリギリ100回出来るとしましょう。

すると、101回やる事で筋肥大は起こるのですが、それを実際に行うのは非常に困難です。

だいたい20~30回すると息が上がり始め、50回を過ぎると脳が辛くなってきて、「もうやめようよ」と囁きかけて来ます。

そんな誘惑を乗り越えていければいいのですが、ほとんどの人は途中で断念してしまいます。

その結果、筋肥大が起こりません。

例え90回やろうとも100回やろうとも、骨格筋としての限界を超える回数に達しなければ、筋肥大効果は劇的に弱まるのです。

ですから、単純に筋肉を大きくしたい場合、高負荷低レップで行うのが効果的と言えます。

科学的にはどんなレップ数でも構わないのですが、現実的には低レップが一番楽であるという事です。

それぞれにメリットがある

但し、何度も言うように低レップが明らかに良いのは、筋肥大にフォーカスした時の話です。

健康面や実用面を考えた場合、個人的には高レップの方が良いと思っています。

高レップでは心肺が疲労するわけですから、当然、心肺機能が上がって体力が付きます。

エネルギー効率が高まり、ちょっとやそっとでは疲れなくなります。

細かい事を言えば、細胞内のミトコンドリアが増える事から、アンチエイジング効果も期待できます。

また、脳の疲労を乗り越える事で、ストレス耐性も身に付きます。

心理的ブレーキのハードルが上がって、厳しい環境でも十分に力を発揮し続けるメンタルが手に入るのです。

しかも、脳のストレス耐性はあらゆるストレスと共有している事がわかっています。

つまり、運動により脳のストレス耐性が高まると、仕事や人間関係などのストレスにも強くなるという事です。

これは人生レベルで我々を助けてくれると思います。

大切なのは、目的とアプローチを混同しない事です。

「とにかく今は筋肉を大きくしたいんだ」

という方は高負荷低レップをメインに筋トレメニューを組むと良いと思います。

「健康促進や体力も付けていきたい」

という方は低負荷高レップをメインにしてみて下さい。

勿論、時期によって切り替えるのは全然有りです。

目的はその時その時で変わるでしょうし、同じ事をやっていると飽きても来ますから、今の気分で柔軟に変えていくべきと思います。

尚、今回話した3つの疲労の広がり方はレップ数だけでなく筋トレの姿勢でも変わります。

寝たり座ったりの姿勢で行う筋トレは心肺の疲労が余り溜まりません。

これは姿勢を維持する大きな筋肉が休まるためです。

逆に立った姿勢だと心肺も疲れやすくなります。

ですから、例えばショルダープレスを行うにしても、座って行うと骨格筋を限界まで疲労させやすいので、筋肥大としての効果は高くなります。

シーテッドショルダープレス

勿論、立ってやった方が体力も付きますし、バランス能力も鍛えられるメリットがありますので、各人の価値観に合わせて選択してもらえたらと思います。

ショルダープレス

マラソンで筋肥大は起こるか?

ちなみに、マラソンなどの長時間運動は超々低負荷高レップ筋トレとも言えるもので、3つの疲労が全て重くのしかかります。

そういう意味では、筋力も体力もストレス耐性も全て身に着く素晴らしい運動と言えると思います。

但し、劇的な筋肥大を期待するのは難しいです。

心肺と脳の疲れが優先してしまう事もありますが、何よりもヒトの脚は持久力が異常に高いため、低負荷では骨格筋を追い込めないためです。

ですから、いくら高レップを採用するとしても、マラソンで脚を太くしようとは思わない事です。

不可能とは言いませんが、茨の道になる事は間違いありません。

マラソンついでに余談になりますが、フルマラソンの大会などで甘い物を食べるのは、脳の疲労を回復させるためです。

出場経験者はわかると思いますが、フルマラソンでは3km毎位に給水ポイントがあり、アンパン、バナナ、お菓子などが置かれています。

そこで多くの人は体を回復させようとして必死に甘い物を食べているのですが、それは効果を少し履き違えていると思います。

運動中にモノを食べるという事は、消化にエネルギーが使われて、実は逆に体力を落としている事が多いのです。

期待できる本来の効果は、脳の回復です。

マラソンのような超高レップ運動を続けていると、脳の疲労が限界近くに達して来ますが、その疲労をリフレッシュできるのが糖質です。

糖質は口に入れた瞬間に脳が感じ取り、エンドルフィンなどを分泌してストレスを和らげ、その後のモチベーション維持に役立ちます。

ですから、マラソン中は脳の疲労が限界に来た時に甘い物を取り入れるべきです。

逆に言うと、脳が疲れていない時は、給水ポイントで無理して食べてはいけません。

消化に疲れるし、体も重くなって不利になるだけです。

フルマラソンは給水ポイントが余りにも多く、走った後に逆に太ってしまうなんて事もある位、食べ過ぎる人が多いので気を付けてもらえたらと思います。

少し脱線が過ぎましたが、今回覚えておいて欲しいのは疲労には3区分あるという事です。

骨格筋、心肺、脳、3つの疲労区分とレップ数の関係を考慮し、各自の目的に合わせて運動メニューを組んでみて下さい。

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コメント

    • J
    • 2018.10.28 7:33am

    これまで高負荷で8-10レップのトレーニングを行ってきましたが、高重量すぎるので、時に低負荷高レップのサイクルを少しの期間行うのがよいとのコメントをもらいました。この低負荷高レップを時々取り入れる効果は何でしょうか?

    • 丸々筋肉
    • 2018.04.06 2:53am

    マラソンは高レップじゃなく超レップだな
    極端に多いレップ数だと筋肉の栄養まで使ってしまう
    そうなれば運動により筋肉がやせ細るし回復期間も長くなる
    低負荷高レップは精々2~3分の動作でこまめに栄養を補給しながら数セット行う
    人間の回復力とエネルギーの吸収力と消費を考えて行わないとただの苦行になる

黒羽根雄大黒羽根雄大

物理学専攻・元プログラマー、体を壊して仙人を目指す事になりました。

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