筋トレには大きく、
複合関節種目(コンパウンド)
単関節種目(アイソレート)
の2つがあります。
複合環節種目はその名の通り、2つ以上の関節を使う種目の事で、多くの筋肉を一気に鍛える運動です。
例えば、肩と肘を同時に動かすプッシュアップやチンニング、股関節と膝を同時に動かすスクワットなどです。
他に、ベンチプレスやデッドリフトもそうです。
一方、単関節種目は1つの関節を使う種目で、基本的に一部位を鍛える運動です。
例えば、上腕二頭筋を鍛えるアームカールや、上腕三頭筋を鍛えるトライセプスエクステンションがあります。
他に、ハムストリングを鍛えるレッグカールや大腿四頭筋を鍛えるレッグエクステンションもそうです。
そして、単関節種目の方は昔から故障に繋がりやすいと言われる事があります。
理由は1つの筋肉、1つの関節に負荷が集中してしまうためです。
本来は全身を使って負荷を分散させるべきものなのに、無理矢理1つの場所に集中させるために怪我をしやすくなるという事です。
また、体の使い方が悪くなるとも言われます。
人体は全身を協調させて動くべきものですから、それと逆行するような単体の運動が癖になってしまうと、体の使い方が下手くそになるというわけです。
これに関して、僕の意見は少し違います。
正確に言うと、以前はそのように思っていましたが、今はそう簡単に片づけられる話ではないと考えるようになりました。
色々と情報をアップデートしていく中で見えて来た事ですが、今回はその話をしてみたいと思います。
単関節種目の賛否についてです。
本当に故障に繋がるのか?
体の使い方が悪くなるのか?
興味ある方は見ていって下さい。
単関節種目が推奨される部位
結論から言うと、単関節種目は
体の中心に行くほど怪我が減って体の使い方が上手くなり、末端に行くほど故障が増えて体の使い方が下手になる
というものです。
これを聞いて、前回の補助具の話を思い出した人もいると思いますが、正にそれと通じる話になっており、敢えてこの2回を連続の記事にしています。
さて、人間の体は全身で負荷を分散し、協調して動くというのはその通りです。
それが一番怪我が少なく、効率的に動けます。
しかし、全身の連動は全てが平等に動くわけではなく、正しくは中心から末端への順で動いて行きます。
つまり、体幹から始まり、股関節や胸椎へと繋がり、腕や脚へという順番で動くという事です。
ところが、現代人の多くは中心部を使うのが苦手で、末端主導で動いてしまうという問題を持っています。
これは生活環境の都合である意味仕方ない事でもあるのですが、とにかく神経レベルで中心部がオフになっており、逆に末端部が過剰にオンになっているのです。
そして、末端優位で動いていると四肢の怪我が増えます。
しゃがみ動作で膝を痛めるのはその典型ですし、足が攣ってしまうのも、その傾向から来ています。
逆に、中心部は弱いので腰痛が引き起こされます。
姿勢も猫背や反り腰など悪いものとなって行きます。
この問題を解決するために複合関節種目が推奨されたりしますが、そもそも中心部の神経が入っていない状態ですから、そのままでは全身に負荷は分散されませんし、協調もされません。
コンパウンドの負荷を末端が一手に引き受けてしまう形となり、余計に怪我が増えてしまって、パフォーマンスも上がっていきません。
本質的に問題を解決したいのであれば、中心部の単関節種目を行う必要があります。
まずは切れてしまった中心部にスイッチを入れ直すのが先決であり、複合関節種目はその後の話なのです。
アクティベーション
単関節種目というのは、ボディメイク系の情報により、特定の筋肉を発達させるものというイメージが強いと思います。
しかし、それ以上に大事な働きがあって、それがスイッチを入れる機能です。
神経が余り入っていない部分を集中的に動かす事で、しっかり使えるようにしていく事ができるのです。
これをアクティベーションと言います。
つまり、まずは使えていない部位を単関節種目でしっかりアクティベーションして正常な状態を取り戻します。
その後で複合関節種目をやる事により、初めて全身に負荷が分散され、協調して使えるようになります。
ちなみに、アクティベーションはボディメイクでも使われる事があります。
例えば、胸のトレーニングでベンチプレスの前にフライをする人がいますが、これは胸をアクティベートしている事になります。
大胸筋をメインに動かすフライで胸をアクティベートする事により、その後のベンチプレスでも腕より胸に効くようになるというわけです。
体幹部の単関節種目
既に述べた通り、アクティベートする部位でプライオリティが高いのは、神経が切れて使われにくくなっている中心部です。
最も重要なのがお腹(体幹)です。
ちなみにここは腹直筋ではなく、腹圧を形成する横隔膜や腹横筋などです。
現代ではシックスパックに憧れて腹直筋が非常に強い人が増えていますが、その人達が体幹を使えているかと言えばそんな事はありません。
多くの場合、腹直筋に頼り過ぎてしまって、肝心の腹圧が抜け、怪我をしやすい非効率な体になっているのです。
ですから、まずはお腹のアクティベーションをするのが大事です。
代表的なのはレッグロワリングです。
呼吸を止めず、脚や腹筋の力を使わず、腹圧で片方の脚を上げ下げします。
これでしっかりお腹にスイッチを入れておけば、トレーニングで体幹を使えるようになり、怪我のリスクも下がります。
尚、股関節が硬くて脚が上がらない場合は、写真のようにクッションを敷いて下さい。
続いて大事なのはお尻のアクティベーションです。
道具無しで簡単にできるのはヒップリフトなんかが良いと思います。
女性がよくやるヒップスラストと同じ感じですが、バーベルを使う必要はありません。
ただ、できたら写真のように膝にミニバンドを巻き付けてお尻を外旋させながら行うと効果的です。
この後で、スクワット運動などをすると太ももではなくお尻が使われやすくなります。
上半身で大事なのは、肩甲骨のアクティベーションです。
名前は無いので紹介が難しいですが、肩甲骨を寄せ下げるエクササイズです。
僧帽筋下部線維を使って肩を引き下げます。
トレーニング前にこれをしておくと、肩甲骨がしっかり使えるようになり、上半身の怪我のリスクも劇的に減るはずです。
一先ず基本はこの3か所で良いかと思いますが、いずれも一人だとできているか判定が難しいため、一度トレーナーさんに見てもらうのがいいと思います。
末端部の単関節種目
現代人の末端部は既にアクティベーションされています。
むしろ過剰に動いているくらいですので、それ以上に単関節種目を取り入れると、一ヶ所に負荷がかかり過ぎて怪我のリスクが上がります。
中心部は筋肉も脂肪も分厚く乗っていて頑丈ですが、か弱い末端部は単体で動かしていると簡単に痛めてしまうのです。
また、末端手動の動きが身に付いてしまって、中心から動くのが下手になってしまう可能性もあります。
これはスポーツをされる方にとってはパフォーマンスダウンに繋がり、本末転倒になってしまう事も少なくありません。
ですから、基本的に末端部の単関節種目は必要ありません。
ありませんが、それでも鍛えたい人がいるのも現実だと思います。
上腕二頭筋をボコッと盛り上げたいとか…
太くて立派なふくらはぎが欲しいとか…
血管バキバキの前腕を作りたいとか…
そういうロマンも一緒に追求したくて、体を鍛えている人も多いと思います。
その場合は、複合関節種目の後にやるのが良いと思います。
例えば、懸垂をやり込んだ後にアームカールをするとかスクワットの後にレッグエクステンションをするとかです。
ある意味、王道ですね。
複合関節種目の後なら扱う重量も軽くなるので、怪我のリスクも当然下がります。
また、複合関節種目で全身の連動性を高めた後であれば、体の使い方が極端に下手になってしまう事も避けられるはずです。
正しいトレーニングの順序
こう考えていくと、現代人向きの本質的なトレーニングの順序が見えて来ます。
つまり、
中心部の単関節種目 → 複合関節種目 → 末端部の単関節種目
という順番です。
まずは大事な中心部をアクティベーションし、その後で全身を使ってたくさんの筋肉を一度に動かし、最後に拘りの末端部にフォーカスします。
トレーニングの順序には色んなセオリーがあると思いますが、今のところ僕自身はこれが最善かつ現実的では無いかと考えています。
最後に纏めますが、
- 単関節種目は体の中心部であれば怪我を減らし、パフォーマンスアップに繋がる
- 末端部の単関節種目は怪我やパフォーマンスダウンのリスクを伴うが、複合関節種目の後にする事で最小限に抑えられる
という事です。
前回のトレーニング補助具の是非と合わせて見てもらえると、より理解が深まると思います。
参考になれば幸いです。
トレーニングの弊害を減らせるように取り入れてみたいと思います。回答ありがとうございました。
トレーニングビギナーですがとても興味深く読ませていただきました。
腹圧で足を上げ下げするレッグロワリングは上げるときに呼吸は吐くのがよいとか吸うのがよりよいなどあったりするのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
最初の内は吸いながら下げて吐きながら上げるのがやりやすいと思います。最終的にはどちらでも出来るようにします。
こんにちは
わかりやすい解説ありがとうございます。
とても参考になりました。