「ダイエットしたいのだけど、ジョギングと筋トレどっちがいい?」
先日、友人からこのような質問をされたのですが、なるほど、この手の問題は未だにあるのだなと思いました。
俗に言う「有酸素 VS 無酸素」という議論です。
案外、同じような疑問を持っている方が多そうな気がしたので、今回はこのテーマに突っ込んだ話をしたいと思います。
まず、先程の質問へ回答ですが、結論から言うと僕は「筋トレ」と答えました。
一般的にダイエットには有酸素が有意と言われていますが、僕の実践的感覚としては無酸素の方が効率的と感じています。
周りを見てもジョギングでダイエットに成功した人は余り見た事がなく、逆に筋トレで痩せた人はたくさん知っています。
僕の周りに筋トレ好きが多いという事もあると思いますが、パッと思う印象としてダイエットは筋トレです。
では何故、有酸素運動よりも無酸素運動の方がいいのか?
感覚的な話だけしていても仕方がありませんから、生理学的観点を踏まえて腑に落としてみます。
「基礎代謝が上がるから」というつまらない話だけでなく、皆が見落としがちな根本的要員まで抑えられたらと思います。
有酸素運動の落とし穴
観点としては2つあります。
1つは消費カロリーの問題。
ジョギングは30分程走ると約300kcalのエネルギーを消費すると言われています。
ウォーキングだとその半分の約150kcalを消費すると言われています。
これはネットでググれば山のように出て来る情報ですし、基本的な生理学の本にも必ず書かれている内容です。
その消費カロリー分だけ痩せるという事です。
ここで1つ疑問に思って欲しい事があるのですが、「筋トレの消費カロリーはどの程度なのか?」というものです。
こちらは何故か余り情報が出回っていないのですが、どうも世間の認識として無酸素より有酸素の方が消費カロリーが大きいと思っている方が多いようなのです。
いや、でも考えて下さい。
どう考えたってジョギングより筋トレの方が疲れるじゃないですか?
勿論、強度にもよりますが、少なくともジョギングと同じ程度のカロリーは消費していてもおかしくないと思うのが普通だと思います。
そして、その感覚は合っています。
筋トレの場合もだいたい300kcal程度のカロリーは消費します。
ハードなトレーニングをすれば400~500kcalと一般的な有酸素運動の消費カロリーを上回ります。
単純な消費カロリーだけで考えれば、無酸素運動の方が有意という事です。
するとここでもう1つの観点が出て来ます。
エネルギー代謝の問題です。
そもそも「ダイエット=有酸素運動」と言われる理由は、エネルギー代謝の話から来ています。
我々が運動で消費するエネルギー源が大きく分けて2つある事は多くの方がご存知の事と思います。
そう、「糖」と「脂肪」です。
糖は筋肉中に「グリコーゲン」という形で保存されており、脂肪は贅肉の中に「中性脂肪」という形で保存されています。
運動する際はこの2つのエネルギー源が両方使用されますが、重要なのはその使用バランスが運動強度によって変わる事です。
これもほとんどの方が知っていると思いますが、有酸素運動のような軽めの運動では「脂肪」が有意に、無酸素運動のような強度の高い運動では「糖」が有意になります。
つまり、脂肪を無くしたければ有酸素運動という事になります。
超極端に言えば、30分のジョギングでは300kcal贅肉が無くなりますが、筋トレでは300kcal筋肉から糖が無くなるだけで贅肉は一切減らないという事なります。
「じゃあやっぱり有酸素の方がいいじゃんいいじゃん!」と思われるかもしれませんが、実はここに落とし穴があります。
それは運動後の食事です。
不思議とほとんどの方が考慮していないですが、僕達は運動をした後に必ず食事をします。
間隔は人によって違うと思いますが、どれだけ空けたとしても必ず食事をするタイミングがやって来ます。
その時に食べたエネルギーがどうなるのかを考えて下さい。
当然ですが、エネルギーは枯渇しているところに優先されて補給されます。
これも極端な話になりますが、例えば先程失った300kcal、食べ物で言えばオニギリ2つ分程度を食べたとします。
この時、筋トレで筋肉の糖分を300kcal失っている人は、食べたオニギリが全て筋肉に戻っていきます。
一方、ジョギングで贅肉を300kcal失っている人は、食べたオニギリは全て贅肉に戻ります。
つまり、全部元通りという事です。
勿論、再三言っている通り、これは極端な例です。
本当は筋トレでも脂肪を使うし、ジョギングでも糖分を使うので、このようにキレイに元通りになるわけではありません。
しかし、概要としてはこのような事が起きているのです。
実際、激しい筋トレをした日は高カロリー食をしても全く太らないというのは、自分自身で何度も体験しています。
僕は毎日必ず体組成計で自分の状態をチェックしていますが、数値的に見てもその事実が確かめられています。
ここまでわかってくると、ジョギングでダイエットを失敗する人の仕組みも見えて来ます。
彼らは有酸素運動で脂肪を直接消費しているわけですから、その後の食事で元に戻らないよう糖質と脂質を極端に減らします。
美味しいご飯が食べられず、食べたら食べたで罪悪感が生まれ、それがストレスとなって、最後はリバウンドという悲劇を起こすのです。
それに対し、無酸素運動の筋トレ組は筋肉内の糖を消費していますから、回復のためにその後の食事である程度の糖質を食べなければいけません。
勿論、食べ過ぎはダメですが、美味しいご飯を気持ち良く食べれますからストレスにもならず、結果としてダイエットに成功しやすくなるわけです。
こうしたエネルギー代謝に関する考えは多くの人が考えを改めるべき事だと思っています。
運動というその瞬間のキャプチャで見れば確かに有酸素運動はダイエット効果が高いと思います。
しかし、もう少しスパンを伸ばして食事までを含めて考えた場合、極論、それは無酸素だろうが有酸素だろうが関係が無くなるのです。
こうした誤解は現代人の悪い癖である、短期的思考から来ています。
目の前のチョコパイを食べれば確かにその瞬間は幸せですが、それは血液を巡り巡って脂肪となり、醜い姿を晒す事になります。
お酒を飲めば嫌な事から一時的に目を背ける事はできますが、二日酔いを抱える上に、問題は何も解決していません。
すぐに売込みをかければ小銭は手に入るかもしれませんが、大金を手にしたければ、じっくり信頼関係を構築しなければなりません。
僕達は常に如何なる時でも長期的に長期的に物事を考えられるようにならねばいけないと思うのです。
無酸素運動ならではのメリット
さて、話を戻しますが、食事まで含めて考えた場合、無酸素も有酸素も脂肪の消費量は同じになりました。
これは同程度の運動量を行った場合になりますが、そもそも論、運動量は有酸素より無酸素の方が高くなる傾向にあります。
1時間以上のジョギングであれば筋トレと5分5分にできるかもしれませんが、大抵は30分のジョギング、1時間のウォーキング当たりを考えていると思うので、それであれば筋トレをした方が消費カロリーは高くなると思います。
そう考えると、ダイエット効果は筋トレ優位に傾いてきます。
そして更にもっと長期的に考えていくと、その優位性は顕著なものになっていきます。
その要因の一つは筋肉痛です。
激しい筋トレは筋肉痛を引き起こしますが、肉体はその修復のために2~3日エネルギーを使い続けます。
勿論、トレーニングそのものの消費量に比べれば微々たるものですが、そういう付属的な消費カロリーが毎回付いて回る事になり、積み重ねによって非常に大きなものになると思います。
それから、よく言われる基礎代謝の向上。
数値的には諸説ありますが、一般的に筋肉が1kg増えると基礎代謝が50kcal増えると言われています。
何もしなくても毎日50kcal使われるという事です。
これも1日単位の短期的思考で見ると大した事がないかもしれませんが、1年に換算すると何と18,250kcalという莫大な量となります。
脂肪は1g当たり9kcalなので、体脂肪に換算すると約2kgです。何もしなくて自動的に2kg減るという事です。
これで更に筋肉量を増やして数年単位で見れば、とてつもなく大きな結果に繋がる事がわかると思います。
それから、成長ホルモンの存在。
負荷の高い無酸素運動をすると成長ホルモンが分泌されますが、これ自体に脂肪分解効果がある事が明らかになってきています。
これも単発で見れば大きな効果は見込めないと思いますが、何度も繰り返す事を考えれば無視できない値になってくると思います。
という感じで、長期的に見れば見る程にダイエット効果は無酸素有利なのではという結論に至るわけです。
賛否両論あるかもしれませんが、僕がダイエットに筋トレを押している理屈はこういう風になっています。
有酸素運動は不要か?
ところで、今回の話を聞くと有酸素運動には何のプラスも無いと勘違いしてしまう人がいそうですが、そんな事は無いので誤解せぬよう。
それこそ短期的思考になっているのですが、有酸素運動は無酸素運動には無いメリットが様々あります。
最も大きなものは体内ミトコンドリアの増殖でしょう。
有酸素運動は主に遅筋と呼ばれる持久力の高い筋肉が使われますが、この遅筋には大量のエネルギーを生み出すミトコンドリアが多数生息しています。
そして、有酸素運動により遅筋がシゴかれると、エネルギー効率を上げるためにミトコンドリアが増殖を始め、体内で使えるエネルギー絶対量が増えます。
すると、筋肉の持久力が高くなるのは勿論、酵素やホルモンの生成量や神経伝達のスピードがアップなど、あらゆる側面から肉体にプラスの影響をもたらす可能性があると考えられます。
ミトコンドリアの活性化はフリーラジカルの働きも抑え、老化現象を防ぎ、アンチエイジング効果もあるとされています。
その他にも有酸素運動は心肺機能の向上も見込めますし、心身のリラックス効果もあります。
また、短い期間内で集中して体を絞る必要がある場合、有酸素運動が抜群の効果を発揮するのも確かです。
既にある程度、体が出来上がっている人が更に絞り込たい時なども、有酸素運動がダイエットのダメ押しに力を発揮します。
そう考えると、結局は月並な結論になるのですが、有酸素運動と無酸素運動は両方を行うのがベストかと思います。
ただ、そんなに時間も無い人も多いと思いますし、とりあえずダイエットと考えている人においては、まず無酸素の筋トレから始めてみてはいかがでしょうか?というのが、今回のお話でした。
はじめまして。
茅ヶ崎でからだをケアする仕事をしている者です。
筋トレと心の関係について調べていたら
黒羽根さんのこちらの記事に辿りつきました。
ぜひたくさん方に読んでほしいと感じたので
私のブログでシェアさせて頂きました。
事後報告になってしまい大変申し訳ありません。
シェア不可でしたらすぐに消しますので
お知らせ頂ければと思います。
茅ヶ崎・カラココケアハウスgajumaru
上林よしか
シェアした記事です。
http://s.ameblo.jp/yoshika1982/entry-12041030068.html
いつも面白い記事、
ありがとうございます。
無酸素運動(筋トレ)の
ダイエット効果について、
色んな視点から説明されていて、
とても面白かったです。
「迷ったら、まずは筋トレ」
「できるなら両方」
ダイエットで苦戦している
知り合いに勧めてみます。