Tokyo仙人ジム
「今やってる筋トレメニューを教えて下さい」
コンサルを受けに来た方には大抵この質問をしますが、
だいたいはこんな感じの内容が返ってきます。
ベンチプレス10回×3セット
ダンベルローイング10回×3セット
ショルダープレス10回×3セット
ダンベルランジ10回×3セット
…などなど。
これを見て僕はすぐに聞き返します。
「成長してる実感はありますか?」
すると案の定、「いや、実はあんまり…」
そして最後に僕が、「ですよね」
最早このやりとりは定番になりつつありますが、
非常に残念な筋トレメニューに対して僕がダメ出し前の
最終確認をしているところです。
見る人が見れば一瞬でわかる事なのですが、先程のような
筋トレメニューは上手に筋肉を鍛えられていない人の典型例です。
ほとんど体型が変わらない無駄なトレーニングの
定番の型と言ってもいいかもしれません。
一体何がいけないのか?
これまではコンサル生に直接お伝えしていたのですが、
余りにも同じような状況に陥っている人が多かったので、
今回ブログの記事としてこの原因を取り上げる事にしました。
半年以上、筋トレを続けているにも関わらず、理想的な体を実現できていない人は
この落とし穴にハマっている可能性があるので、是非読んでみて下さい。
それでは早速始めたいと思いますが、先程のような筋トレメニューで
すぐに目が付いて違和感を覚えるのが「10回」というところです。
全てのトレーニングが1セット10回で区切られています。
そして実際に10回ずつこなしています。
きっと同じ事をしている人は多いと思います。
10回やって休憩、10回やって休憩、
それを何セットか繰り返している人が大半でしょう。
確かに筋トレのセオリーとして「10回」という事は
よく言われる事だと思います。
どんなサイトを見ても、雑誌を見ても「10回やりましょう」と書いてあります。
最早常識となってしまって、
空気のように当たり前のようになっているかもしれません。
ですから、皆自動的に10回行っている傾向があります。
しかし、実はその10回がダメなのです。
そこに落とし穴があります。
正確に言うと、10回を指標にするのは間違っていないのですが、
実際行う時に10回決め打ちで行っているのがマズイのです。
必ず10回行う筋トレは2つの大きな問題を孕みます。
1つは負荷が軽すぎる可能性。
筋トレで10回行うのは確かに良い目安なのですが、
それが効果を発揮するのは10回で限界が来た場合です。
10回行った時点で全ての力を使い果たし、
11回目をやったら潰れるという負荷状況の下で初めて意味を持ちます。
しかし、多くの人は11回目が上がるのです。
もっと言えば12~13回、無理をすれば14~15回上がる負荷でやっています。
それなのに、実際に行うのは常識の10回…
それじゃ筋肉が発達しないのは当たり前です。
「いや~、ギリギリでやってるつもりですけどね~」と反論する人もいますが、
毎回必ず10回行えてしまっているという事は、余力が残っている証拠です。
人間の体は毎度ピッタリ10回で限界が来る程、美しく計算されていません。
恐らく、頑張れば11回以上できるはずなのに、暗黙知の10回で止めてしまっているのです。
つまり、負荷設定が軽過ぎる可能性が高く、全然体を追い込めていない事になります。
これが1つ目の問題です。
もう1つの問題はパーシャルになる可能性。
人によってはしっかり高い負荷をかけて行えている人もいると思います。
しかし、10回と決め打ちでやろうとしてしまうと、10回に届かなそうだと感じた時、
自然とフォームが「パーシャルレンジ」になってしまいます。
パーシャルレンジとはフルレンジの逆の事で、可動域を狭く限定した動きの事です。
例えばベンチプレスであれば、胸の上10cm上位で切り返すような動きです。
本当は胸に付くくらいまで降ろして持ち上げるべきですが、
その手前で止めて持ち上げてしまうのです。
※左フルレンジ、右パーシャルレンジ
要はズルしようとするわけです。
「10回やらねばならない」という鉄の掟が頭にあるので、
それを実現するためにフォームを崩し、ズルして回数を稼ごうとしてしまうのです。
いくら高負荷を扱っていたとしても
パーシャルレンジになっては効果は激減です。
正に本末転倒というヤツですが、こういう人はよくジムで見かけます。
見栄を張って重い重量を扱っているのですが、レンジが超狭くって
全く意味が無いと言う何とも残念な人達がたくさんいるわけです。
ちなみに、パーシャルではなく、チーティングになっている人もいます。
チーティングは反動を使ったズルです。
実用性やネガティブストレスを狙って意図的にやるのはいいですが、
単純に回数を稼ぐために行うチートは何の効果もありませんので、
気を付けなければいけません。
以上2つの理由により、10回と決め打ちで行う筋トレは問題です。
「では何回やればいいのですか?」と聞いてくる人がいるのですが、
そもそも回数を決めてはいけないのです。
回数を決めるからそれに引っ張られて楽したりフォームが崩れてしまいます。
回数をフリーにしておく事により、正しい筋トレが担保されるようになるのです。
そして、僕達がまず考えなければいけないのは、
どの位の負荷を設定すべきか?という事です。
正しい負荷を一概に示すのは難しいですが、
生理学的観点や継続性までを考慮すると、
「フルレンジで6回以上はできて、10回は出来ない」
という負荷を設定するのが良いと思っています。
10回できてしまっては軽過ぎます。
一方で、5回しかできなければ重過ぎます。
結果的に回数は6~9回となり、
その間で完全に潰れてしまうよう負荷で筋トレをするのが好ましいです。
この設定ができれば、毎回筋肉痛が起こる位に体を追い込めて、
筋肉はどんどん発達していくはずです。
以前、メルマガで8回を推奨した事がありますが、そこには
「6~9回の間で潰れる負荷を用いなさい」という裏の意味があるのです。
という事で、これが最も気になった回数の件だったのですが、
実はもう1つ目に付いて気になっているところがあります。
それは、「3セット」というところです。
回数の10回と並び、セット数は3セットという神話があります。
多くの人は10回を3セットで合計30回をやっている事でしょう。
しかし、これも3セットと決め打ちでやるのは問題です。
何故かと言えば、本来1セット1セットでできる回数にはバラつきがあるからです。
先程お話したように、1セット内は普遍的に10回と設定せず、
結果として6~9回のように可変的になるとお話しました。
すると、場合によっては6回×3セットで合計18回しか行わなくなる場合が
出て来る事もあるわけですが、その回数では少な過ぎるのです。
3セット行うという事の本質は合計で30回行う事にあります。
それにも関わらず、30回より10回以上少ない18回で終わってしまっては、
十分に鍛えられません。
結論から言えば、セット数は決めずに、合計で30回と決めるべきです。
「セット数」ではなく、「合計回数」を設定しておく事が重要です。
つまり、6回×3セットで18回しかできなかったら、
残り12回分を埋めるために4セット目5セット目をやるべきなのです。
勿論、3セット以内に30回できれば4セット目以降を行う必要はありませんが、
1セットは9回以内で潰れなければいけないので、基本3セットで終わる事はありません。
9回×3セットで27回できたとしても、4セット目に3回は行う必要があります。
こうしてセット数を可変にしておく事で、
必ず目標の回数をこなす事ができるようになり、
十分な負荷を体に与える事ができるようになります。
また、このセットフリーを用いると、4セット目以降の回数を減らすために、
それまでの3セットを必死で頑張れたりする効果もあります。
例えば、最初の3セットで6回ずつしかできなかったら残り12回もやらねばならなくて
精神的にきつくなりますが、頑張って9回ずつ行えれば後3回で済むわけです。
「後で楽したい」という気持ちから必死で筋トレを行い、
結果的に効果効率を上げられたりするのです。
それから、セットフリーには4セット目以降があるという安心感を生む作用もあり、
パーシャルなどのズルをして回数を稼ぐような気持ちが無くなります。
3セットと決められていると何とかそれをクリアすべくパーシャルレンジになりがちですが、
セットフリーになる事で「まだ次がある」と余裕をもってフルレンジで行えるのです。
セット数は自由になって初めて力を発揮する、
こんな考え方もある事を覚えてもらえたらと思います。
回数に続いてセット数の概念をガラリと変えてみたわけですが、
大切なのは常識に縛られない事です。
見ていて思うのは、皆常識に対して無防備過ぎます。
筋トレの常識なんてのは大雑把に作られたものが大半で、
そこには弱点もあるし、人によっては逆効果になる事もあります。
そもそも10回3セットなんていうものは生理学的には余り意味を
なすものではない事は以前のトレーニングセミナーでも言った通りです。
常識に縛られる必要はありません。
もっとフリーダムでいいのです。
ついでなので常識を外した効果的な筋トレの例を
いくつか紹介しておきましょう。
例えば、筋トレの分割。
効率よく鍛える方法として筋トレの世界では、
「胸肩三頭筋」「背中二頭筋」という言葉があります。
これは、胸と肩と上腕三頭筋を同じ日に鍛えて、
背中と上腕二頭筋を同じ日に鍛えるというものです。
前者は主にプッシュ系、後者はプル系種目になる事から
それぞれ使われる筋肉が被るために一括りにされており、
こうして分割して鍛えるのが効率的と言われます。
確かにこれは理に適っているのですが、実は大きな弱点も孕んでいます。
簡単に言えばこの括りだと、
一つ一つの筋肉を丁寧に追い込んで鍛えられません。
例えば胸肩三頭筋の日だと、最初に最も大きな筋肉である胸の種目を
やる事が多いわけですが、この時に肩と上腕三頭筋もある程度疲弊します。
すると、その次にやる肩のトレーニングでは十分な高負荷を
かける事ができずに、中強度のトレーニングになってしまいます。
更に、上腕三頭筋のトレーニングをする時にはほとんど余力が残っておらず、
非常に弱々しい脆弱なトレーニングしかできなくなってしまうのです。
これでは肩や上腕の発達は遅れます。
一応動かしているので筋肉が落ちる事はありませんが、
今以上に発達していくのにはかなり時間がかかるでしょう。
実際、この分割法を採用している人は胸だけが筋肉痛になって、
肩や三頭筋は十分に鍛えられていない人がほとんどです。
背中二頭筋であれば、背中は鍛えられても上腕二頭筋は発達していきません。
使う筋肉が被る種目を同じ日にやってしまうという事は、
それだけ力が分散してしまうという事であって
それぞれを十分に鍛える事ができないのです。
これを払拭するために、僕が分割法を用いる時は
使われる筋肉が被らないように配慮しています。
胸と肩と三頭筋は別に日になりますし、背中と二頭筋も別の日です。
具体的に言えば、
「胸+二頭筋」「肩+背中」「三頭筋+下半身」
などです。
こうやって分けておくと、肩も上腕もきちんと追い込む事ができます。
本当の意味で鍛えたいと思うのであれば、
胸肩三頭筋も背中二頭筋も分けて行うべきなのです。
その他にも、筋トレの順番。
一般常識で筋トレをする順序は
「コンパウンド」→「アイソレート」と言われます。
コンパウンドは多関節種目、アイソレートは単関節種目ですが、
多くの筋肉が参加する多関節種目を先にやって、
次に局所的な筋肉を使う単関節種目をやるというものです。
具体的に言えば、胸を鍛えるのであれば、肩や三頭筋も参加する
ベンチプレスを最初にやって、その後に胸だけに効くフライをやるという方法です。
確かに効率的だと思います。
先に単関節種目をやって特定の筋肉だけ疲弊してしまえば、
後に多関節種目で全身を使う時に支障が出てしまいます。
全体を効率よく鍛えるという意味において、
「コンパウンド」→「アイソレート」は理に適っています。
しかし、別の見方とすると、
「アイソレート」→「コンパウンド」にもメリットがあります。
アイソレートを先にやる事で自分が鍛えたい特定の部位を意識させる事ができ、
コンパウンド時にその筋肉の参加率を上げる事ができるからです。
例えば、フライを先にやってベンチプレスを後にやると、
ベンチプレスの時に胸の筋肉の参加率が上がります。
ベンチプレスは人によっては胸が余り参加させられず、
肩と腕だけのトレーニングになってしまう事があるのですが、
フライを先にやる事で胸の意識を高める事ができます。
すると、ベンチプレスで胸が十分に鍛えられるようになるのです。
これはベンチプレスで胸の筋肉痛がほとんど起こらない人にとって非常に重要な
アプローチになるので、是非とも覚えておいて欲しいトレーニングの一つです。
他にも順番で言えば、腹筋は最後というセオリーがあります。
体幹部分が先に疲労すると全てのトレーニング効率が落ちるから
という理由ですが、それも一長一短です。
腹筋が最後になるという事は、腹筋は十分鍛えられません。
それこそベンチプレスとか懸垂とかをやってガッツリ疲労が
溜まった後に腹筋をやっても精神的に追い込むのが難しくなります。
どうしても負荷が軽くなってしまい、
筋肉痛を起こすような腹筋トレーニングをする事ができないのです。
それじゃあお腹を割る事なんてできません。
6パックが最優先で欲しいというのであれば、
腹筋は最初の一発目に持ってきた方がいいと思います。
自分が大切だと思っているものからやっていく、
というのが筋トレの隠れた大原則なのです。
他にも言いだすとキリが無いのでこれ位にしておきますが、こんな感じで
常識に縛られる事なく、自由にトレーニングを組んでもらいたいと思います。
勿論、何の考えも無くやみくもにやっていたら全くの無意味ですが、
ちゃんと調べて理屈も考えられていたら間違いなく効果は上がります。
実際、トレーニングの上級者になればなる程、
常識からかなり外れた事をしていたりします。
本当の意味で自分に適切なトレーニングが組めるよう、
常識を疑いながら改善を繰り返していって下さい。
それが理想の体に近づく一番の近道だと思います。
それでは今日はこの辺で。
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コメント10件
ゆん
筋トレ歴4年の20代です。胸筋の発達が著しく感じられなくなり投稿してみました。
私の胸筋のメニューの流れは
ベンチ80キロを8〜10回(限界)を補助ありで
自分の力で最低、8回の回数が出来なくなるまで追い込み
5キロずつ落として結果60キロまでやり続けます。
なのでセット数は身体のコンディションによって
ばらつきが出ますのでセット数はわかりません。
その後にインクラインを限界8〜10回までできる重さを補助
ありで3セットやります。
最後にフライを8〜10回できる限界の重さで3セットやり
胸のトレーニングは終わっています。
インターバルは2分30です。
指摘等の程宜しくお願いします。
ひろぽん
重量設定を間違うとトレーニング効果は得られないですね。ただ、まだ筋力発揮のメカニズムがしっかりと形成されていない練習者には10回楽に3セットは問題無いと思います。
また、筋力をアップするに徹するのであれば、1セット1セット追い込まなくても、回数を6,7回ほどやらずとも可能です。
reipon
[10回3セットの落とし穴]を拝見し目から鱗の感がしました。突然の質問で申し訳ないのですが、重要と思われる効果が最もあるセット間の時間の取り方はどのように考えておられるでしょうか。
たとえば60秒休憩するとか疲労が回復するまでとかお教え願えれば幸いです。
初心者
勉強になりました。参考にいたします。ありがとうございます。
あああ
セット数と回数の話についてはとても興味深いものがありましたしかし、最後の方に出ていた、胸肩三頭、背中二頭についての話ですが、自分は同じ日にやって疲弊していたとしても、追い込みきれない、ということはないと思います
逆に疲弊した状態でも、できる限り限界まで肩三頭、二頭を追い込むことで、十分発達すると思います
現に今までそれで効果はあらわれています
大きい筋肉を使った後、小さい筋肉を鍛えて小さい筋肉をさらに追い込むことは間違っていないと思います
泥沼
胸筋は特に回復が遅い。なのでまず胸筋から鍛えるべきです。あと、筋肉痛にならないからといって落胆することはありません。ひそひそ
10回3セットは、セット法と呼ばれる奴ですね。初級〜中級者はそれが良いと思いますよ。
コンパウンド種目はテクニックも要しますので、少し余力を
残した方が無難でしょう。
8回3セットでも5回5セットでも。
強いて言えば3セットできたら4セットにするorセット当たりのレップ数を増やす等して慣れたら2.5kgアップ。
一方でアイソレート種目は仰る通り10回限界を3セットやる方が良いかも。
この場合は設定重量はセット毎に下がるね。
コンパウンド種目に関しても、モノホンのビギナーは確かに1セット目から限界の回数でやる方が良いかもね。
平均的骨格身長ならベンチMAX100位になったらセット法かサイクル法を導入すべきかな。
筋トレは1セット6repsじゃ足りない気がする
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