Tokyo仙人ジム
※この記事はメルマガの転記(哲学レポート)です。
今回は人間関係のお話です。
テーマは件名にもある通り「聞き上手」。
何でこれにしようかと思ったかと言うと、
恐縮ながら知人から言われた事がきっかけです。
どうやら自分は聞き上手らしい…
僕は昔から友人が多い方ではありましたが、
それは僕が聞き上手だからだろうと言うのです。
では、聞き上手って何なんでしょう?
そもそも聞き上手とはどういうコミュニケーションを
取る人の事を言うのでしょうか?
ここは余り理解している人がいないと思います。
皆、感覚的には何となくわかっているのだけれど、
腑に落とし込めている人はほぼいない気がします。
でも、ここが明確になってくると、
コミュニケーションが取りやすくなりますよね?
そこで、今回は僕がどうやら得意そうである聞き上手というものを、
哲学的なアプローチで解析し、明確にお伝えしてみたいと思いました。
人が勝手に集まってくる、聞き上手の仕組みです。
人間関係やコミュニケーションの分野の専門家はたくさんいますが、
聞き上手という事に関してそれなりに深く考えている人は見た事が
ありませんので、そういう意味では有意義になるかと思います。
また、友人だけでなく、恋愛や職場の人間関係にも
応用できるように一段高いところから纏めていきますので、
実際に役立つ内容になるかと思っております。
さて、聞き上手は色んな観点から分析が可能ですが、
今回は弁証法を使って説明してみたいと思います。
ここで早速、言葉の確認をおしなければなりません。
「弁証法」という言葉です。
マーケティングの勉強経験がある人なんかは必ず触れる言葉ですが、
多分それ以外の方は知らない方が多いのではと予想しています。
と言う事で、まず弁証法を簡単に解説します。
知ってる方も復習のつもりで聞いて下さい。
弁証法とは哲学の用語で、世界の事物の変化は
全て螺旋的に発展しているという考え方です。
抽象的過ぎるので1つ例を出しましょう。
その昔、人はコミュニケーションを取る手段として
「音声」を発して伝えるという方法を獲得しました。
それは極めて素晴らしい進化と言えます。
しかし、その通信手段には問題がありました。
直接相対しなければいけないというものです。
遠くに離れている者同士でコミュニケイトする場合、
わざわざそこまで行かざるを得ませんでした。
そこで、人々は「文字」というものを開発して、
手紙によるやりとりを覚えるようになりました。
こうすれば遠くにいる者同士でも交流が取れます。
しかし、この方法にも問題がありました。
それはタイムラグがある事です。
手紙を書いた時とそれを読む時には時間差ができてしまうので、
リアルに伝えるべき事を伝える事ができませんでした。
そこで、再び「音声」にフォーカスし、今度は電話を開発しました。
これにより遠くにいてもリアルタイムで
コミュニケーションを取る事が可能となりました。
しかし、またしても問題が。
あらゆる場所であらゆる人とコミュニケーションが
取れるようになって来ると、コミュニケーション自体に
忙殺されるようになってくるのです。
それだけでその日が終わってしまう事もあり、
もっと簡易に要件だけを伝えられるような方法が
求められるようになります。
そこで、人々は再び「文字」を思い出し、
今度はEメールなるものを作りました。
こうする事で端的に情報を交換する事ができ、
無駄な時間を費やす事が無くなりました。
しかし、ここにも問題が…
キリが無いのでここまでにしますが、こういう発展の仕方が弁証法です。
先程、螺旋的と言いましたが、この例では情報手段の発展として
「音声」と「文字」が螺旋しています。
最初「音声」という「対面」の方法があり、
次に「文字」という「手紙」が出て来て、
再び「音声」に戻り「電話」が現れ、
最後「文字」に返り「Eメール」が登場しています。
この後、スカイプとかチャットとかが出て来ますが、
こうやって「音声」と「文字」が反動するように
行ったり来たりしているのがわかると思います。
そして、ただ反動して返ってくるだけでなく、
一段上の段階になって返ってくるのが重要です。
手紙という「正」に対して、電話という「反」が出て、
次はただ手紙に返るのではなく、手紙と電話を踏まえて
乗り越えたEメールと言う「合」になって返って来ます。
こうした「正反合」という形で進化するのが
螺旋的に発展していくという事です。
反動で行ったり来たりしながらも、その中で必ず新しい概念を伴い、
一段階踏まえられて移動しているのです。
世界は全てこうやって進んでいくというのが弁証法的な考え方です。
進化=弁証法的発展とも言えます。
ちなみに、マーケティングだとよくダイエットの例が出されます。
ダイエットは「食事」と「運動」が反動しているというものです。
例えば、リンゴダイエットみたいに食事制限するものが流行した後は、
ビリーズブートキャンプみたいに運動するタイプのものが流行します。
この事からヒット商品のアイデアが見つける方法論として、
弁証法が使われたりしているのです。
さて、この弁証法、マーケティングだけでなく、
人生そのものにも当てはまります。
人間の生き方そのものが弁証法的なのです。
どういう事かと言うと、僕達の人生というのは、頭の中の「理想」と、
実際に起こる「現実」の擦り合わせでできているからです。
頭の中で筋肉質のカッコいい体を思い浮かべ、現実世界にある自分の
三段腹に落胆し、擦り合わせした結果、筋トレをたりするわけです。
そうやって、成長していきます。
生きるとはこの繰り返しです。
例えば、僕は小さい頃は白米を食べていました。
健康志向になってからは玄米を食べるようになりました。
その後、玄米には酵素阻害物質という毒物がある事がわかり、
発芽玄米を食べるようになりました。
しかし、酵素阻害物質は乾燥する事で復活する事がわかり、
今度は玄米を買って自分で発芽させるようになりました。
人生はこうやって反動しながら、全て弁証法的に進んでいくのです。
そして、コミュニケーションも弁証法的運動で表せます。
先程は理想と現実の擦り合わせでしたが、
コミュニケーションとは自分と他者の擦り合わせです。
例えば、「どこ出身ですか?」という質問があり、(正)
「群馬なんですよ」という返事があり、(反)
「あ~、ぶんぶく茶釜ですね!」と群馬県の名物が
踏まえて乗り越えた形で出て来たりするわけです。(合)
ここで言う「反」は別に反対意見や逆説ではなく、2つの物質が
触れた時に必ず生じる抵抗、摩擦のようなものだと思って下さい。
そして、「正」と「反」という言葉の意味の
擦り合わせにより「合」が生まれます。
まあこの会話では進化、発展というには小さすぎますが、
弁証法的運動をしているのはわかると思います。
そして、僕が考えるにコミュニケーションが下手クソな人は
会話において弁証法的運動を無視してしまっている人です。
タイプとしては2つあります。
相手とは関係無い話しかできなくて、「反」を提示できない人です。
例えば、映画の話をしていて意見を聞かれているのに、
余り映画に詳しくないものだから早々に中断させて、
「ところで」と言って自分の話をし出すような人です。
これでは擦り合わせができません。
相手の「正」に対して「反」を出さずに、全く関係無い「正」を
ぶち込んでいるので、会話が全く発展していきません。
全てのメッセージがレベル1止まりで、進化できず死んでいくだけです。
相手が話題としたい土俵を無視して、
自分が話題としたい土俵ばかりを見る人はこうなります。
相手の話題に乗っかる事はできて「反」をしっかり提示は
できるのですが、「合」を作る意識が無い人です。
例えば、一緒に見た映画の意見を聞かれて、それに対して自分の
見解をしっかり言えても、相手の見解を受け入れない人です。
自分の価値観を押し付けてくる人とも言えます。
せっかく反を出せても相手の正を考慮して、踏まえて乗り越える
意識が無ければ、それは不毛な争いを生むだけです。
大衆居酒屋で飲んでいる議論好きなサラリーマンに多い気がしますが、
余り見られたものではありません。
こういった2つのタイプがいるわけですが、
コミュニケーションは弁証法的に進むはずなのに、
その弁証法を無視しているから良き交流が図れないのです。
というか、弁証法的に考えればそれはそもそも
それはコミュニケーションが成り立っているとも言えません。
ただの独り言です。
さて、それでは本題の聞き上手になりますが、
もうお分かりの通り、聞き上手な人とはコミュニケーション中に
弁証法的進化を生ませるのが上手な人です。
自分の正と相手の反を厳密に擦り合せて、
小さくても構わないから合を出す努力をしている人の事です。
例えばジブリの話をしていたとします。
相手から「私ナウシカが凄く好きなんだ」と言われたとしましょう。
しかし、自分はナウシカを見た事が無いとします。
ここで、「へー」とだけ言ってしまう人は
反を出せないコミュニケーション下手です。
或いは、「俺見た事ないんだ、面白いの?」と言うのは、
少し反ぽいのが出ていますが、擦り合わせが足りません。
ではどうするか?
その人の情報量によって対応は異なりますが、
ナウシカは見た事無いのだけれど、
ラピュタとトトロは見た事があるとしましょう。
そうしたら「やっぱジブリっていいよね!」と返答するのは
弁証的な返答の1つだと思います。
相手の発した「ナウシカ」というキーワードで自分に脳内検索をかけ、
出てきた「ラピュタ」と「トトロ」の情報と擦り合わせて、
「ジブリ」という1つ抽象度を高くした言葉で返答しているのです。
もし、ジブリを1つも見ていなかったとしても、相手の情報と
自分の情報を擦り合わせ続け、合が起こるまで努力をすればいいのです。
それができる人が聞き上手です。
これは知人に聞いた話ですが、一流のホステスは正にこれを実践しています。
例えば、お客さんがビール好きだけれど、
自分はビールを好きでは無かったとします。
この時、三流のホステスはビールを無視して自分の話だけをします。
二流のホステスはお客様に従ってビールの話を盛り上げようとします。
しかし、一流は違います。
自分が料理が得意だとしたら、
「ビールに合うおつまみは何だと思いますか?」のように
自分の情報と擦り合わせが起こせそうな場所を探すのです。
そして、擦り合わせが起こるまで探し続けます。
相手と自分の土俵が被るところを探す努力、これができる人が一流です。
自分の話だけをするのはどうしようもないですが、
多くの人はお金や恋愛が絡むと相手に迎合し、
自分を殺して相手に合わせようとしてしまいます。
しかし、これだと上っ面の会話しかできなくて
本当の意味で好意が生じるのは難しいのです。
自分と他人の重なる部分を頑張って探す人、それが本当の聞き上手なのです。
ちなみに、聞き上手と似ているニュアンスで
コミュニケーションテクニックの1つに「オウム返し」があると思います。
相手と同調するので効果的とか言われますが、僕はそうは思いません。
実際にやられると「ん?」となります。
単純に違和感があるというのもそうなのですが、
これは弁証法的に言えば、反が出ていないからです。
相手の正をそのまま返すから進化発展がありません。
つまり、コミュニケーションが成り立っておらず、
全く無意味で建設的で無い関係になってしまうのです。
さて、聞き上手の正体は大分見えてきたと思いますが、
こうやってコミュニケーションに弁証法的発展を
持ち込める人には2つのタイプがいると思っています。
これは何とかして「合」を作るべく、
自分と相手の共通項を探す意識が強い人です。
このタイプはコミュニケーション内において特別画期的な
進化発展をもたらすわけではありませんが、人からは好かれます。
擦り合わせを行おうとする姿勢はそれだけで気持ちが良いからです。
考えてみればわかりますよね。
自分の意見を受け取ってくれて、
それを汲んでくれた事がわかるのは大変嬉しいものです。
擦り合せる場所を探し、擦り合わせを行う意思は
それだけで人を集める力になるのです。
知識や概念をたくさん持っていて、どんな話題でも
瞬時に擦り合わせができる大きな土俵が構築されている人です。
これは強いです。
材料が豊富なので相手の発する言葉全てに
弁証法的発展が自動的に起こる無敵状態です。
言葉の交換をする度に発展が起こるので、
こういう人と話すとパラダイムシフトが起こったりします。
白黒の絵に色を付けられる人と言いましょうか、
よくある言葉で言えば気付きを与えられる人とか、
相手を進化させられる人です。
そういう意味でこちらは好かれるというよりも、
尊敬されるようなタイプの聞き上手になります。
さて、この1と2は天分に関係無く、
人として両方とも努力で伸ばす必要があると思っています。
1は日常会話で常に意識する事が大事です。
簡単な言葉で言い換えると、会話の冒頭か末尾が
相手と重なっている事を意識します。
どんな話題も相手の興味ある話題から入る、もしくは、
自分の話題を相手に着地させる、この意識が大事です。
自分が言いたい事をそのまま言えないので最初は疲れるかもしれません。
慣れない内はストレスも溜まるかもしれません。
それでも意識して行けば心地よくなってきます。
何事も勉強になるという境地がわかると、苦でも何でも無くなります。
大変なのは2だと思います。
こちらは本を読んだり、色んな事に挑戦したりと、
努力らしい努力が必要になって来ます。
仕事に忙殺されているような日常生活や
ストレス過多だと非常に困難な事でしょう。
しかし、2は先程も言ったように凄まじいパワーを持っています。
1だけだと気持ち良い人で終わってしまいますが、
2があると他人を良い方向に変える事ができます。
1は相手に合わせる力ですが、2は相手を進化させる力です。
ですからこちらも是非頑張って欲しいと思います。
両方は大変という人はとりあえず1を頑張りましょう。
現代人は1の意識も無い人がほとんどです。
僕もこういう仕事をしているのでメール相談を貰う事がありますが、
それを見ると一発でわかってしまいます。
擦り合わせの意識が無い人の質問は前置きが無く、
自分の知りたい事だけを書き、言いたい事だけを述べ、
僕が回答したらその後に返事も何もありません。
僕が指摘する事でも無いので放置していますが、
個人的には残念な気持ちになります。
ですから、奢る事無く、まずは1を意識しましょう。
そして、できれば2もやりましょう。
これらを実践していくと、聞き上手というだけでなく、
やがて天職にも繋がっていきます。
色んな勉強や経験は個のユニーク性を開花させ、
擦り合わせの意識は他者から正しい規定を頂く事ができます。
自分のユニークができ、相手から正しく規定されれば、
コアが見えてきて、天職にも繋がるようになってきます。
弁証法的コミュニケーションを意識する事で
人生そのものが変わってくるのです。
今後こういった意識を持った上で人と接すると生きるのが
面白くなってくると思いますので、良かったら参考にしてみて下さい。
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