Tokyo仙人ジム
「筋トレの後は酒飲んじゃダメですかね?」
こんな質問を頂く事があります。
どうやらせっかく筋トレをしたのに、
それがお酒で台無しになってしまうのではないか
と恐れている方が結構いるようです。
確かにネットで検索してみても、
「筋トレした日はお酒を飲まない方が良い」
という事を書いているサイトがたくさんあります。
せっかく運動で消費したカロリーがお酒で簡単に戻ってしまうとか…
アルコールが男性ホルモンを阻害して筋肉の合成を妨げてしまうとか…
アルコール分解に大量の酵素が消費されて筋肉の超回復に力が割けなくなるとか…
色んな事が書かれているわけですが、
圧倒的に筋トレ後のお酒に反対の立場を表明している方が多いようです。
ただ、僕の意見は少し違います。
代謝栄養学的な観点と自分の経験則から
筋トレ後のお酒はそこまで悪く無いと思っています。
逆に筋トレしない日のお酒には問題があると思っています。
ここら辺は信念の問題などから色々な意見が出るところだとは思いますが、
多くの方が疑問に感じている事のようですので、今回はこの話をしたいと思います。
僕が考える酒と筋トレの関係性です。
できるだけ色んな情報を踏まえた上で、実生活に役立つレベルの
記事にするつもりなので、もし興味があれば読んでみて下さい。
さて、最初に大前提を言っておきますが、
お酒は飲まないにこした事は無いと思います。
他の人達の情報にどれだけ正確性があるかわかりませんが、
お酒は睡眠を阻害する事からも、筋肉の成長を妨げて筋トレの
効果を下げるというのは僕もその通りだと思っています。
健康面から考えてもアルコールは内臓への負担が強いので、
できるなら飲まない方が利口でしょう。
しかし、どうせお酒を飲むのというのであれば、
筋トレ後が一番良いと思っています。
現代は仕事や交友関係のストレスなども多いですし、
週に何回かはお酒を飲みたくなる人もいるでしょう。
そんな方がいつお酒を飲むべきかと言えば、
筋トレした日であって、筋トレの直後です。
逆に筋トレしない日は避けるべきと考えています。
何故なのか?
それはアルコールの代謝過程を考えるとわかります。
少し細かい話になりますが、
アルコールは胃と小腸上部で吸収されて肝臓に運ばれて、
2段階の酵素作用を受けて分解されます。
第1段階でアルコールはいくつかの酵素により
「アセトアルデヒド」なるものに変換されます。
このアセトアルデヒドは人体に猛毒であるため、
速やかに第2段階の作用が始まります。
第2段階ではアセトアルデヒドがALDH(アルデヒド脱水素酵素)という酵素で、
比較的安全な「酢酸」に変換されます。
ちなみに、ALDHが遺伝的に欠損している人は
お酒が全く飲めない下戸になります。
猛毒のアセトアルデヒドを分解できないため、
お酒を飲んだらすぐに気分が悪くなってしまうのです。
さて、変換された酢酸は肝臓内で分解され、
最終的には水と二酸化炭素になります。
しかし、アルコールが大量に入って来ると
その分解に肝臓の処理能力が追い付かなくなり、
酢酸は血中に放出され筋肉などの末梢組織に届けられます。
そして、筋肉内で糖質や脂質と同じようにエネルギー源として
使用されて完全燃焼し、やはり最後は水と二酸化炭素になります。
アルコールは糖質、タンパク質、脂質と並んで4大エネルギーと言われますが、
それはアルコールが酢酸となり筋肉などで代謝する事ができるためです。
そういう意味で、アルコールは筋肉の栄養にもなるし、
筋肉の合成を助ける働きもあります。
他の3大栄養素と少し異なる性質はあるものの、
立派なエネルギー源となるのです。
ただ、このエネルギーには1つ問題があります。
アルコールの代謝物である酢酸は他のエネルギーとは違い強い酸性化合物のため、
血中に蓄積するとアシドーシスを起こして悪酔いや二日酔いを起こします。
アシドーシスという言葉は前にも言った事がありますが、
血液のPHが酸性に傾いている状態の事です。
血液は弱アルカリ性に保たれているのが正常で、これが少しでも崩れると
あちこちに体調不良が起こり下手をすると死に至ります。
アルコールを飲み過ぎて気持ち悪くなる要因の1つは
酢酸が蓄積し過ぎてアシドーシスが起こっているためです。
しかし、このアシドーシスを防ぐ手があります。
それが筋トレです。
筋トレなど激しい運動後は筋肉の代謝が活性化して
大量のエネルギーを必要としています。
傷ついた筋線維の修復、新規の筋線維合成、また運動で失われたエネルギー
そのものの確保など、多くのエネルギーを待ちわびている状態です。
そのため、筋トレ後は筋肉がエネルギー源となる酢酸を
勢い良く処理してくれて、酢酸が血中に残りません。
そのおかげでアシドーシスも起こりません。
逆に、何も運動をしていない時は酢酸が蓄積されやすくなります。
筋肉は別段エネルギーを必要としていませんから、酢酸は行き場を失って
血中に残ってしまい、アシドーシスを起こしてしまうのです。
これは自分で試してみると面白い程わかります。
僕はこの仕事を始める時、自分の体を世界に捧げる事を決めて、
無茶な実験もしてきました。
サプリメントを一度に100錠飲んでみたり、
断食して50km走ったりもして来ました。
そう言えば以前、「走り過ぎは健康に良くありませんよ」
という暖かいコメントを頂いた事がありましたが、
百も承知で敢えてやっているところがあります。
そして勿論、今回のテーマに沿ったお酒の実験もしています。
まず激しいウェイトトレーニングして、
その後に大量のお酒をの飲んでみました。
この時はスクワット、ベンチプレス、懸垂などの高負荷種目を6セットずつ、
合計約2時間以上かけて全身をトレーニングしました。
そして、その後の夕食中にウィスキーを飲みます。
原液は苦手なのでハイボールにして飲みました。
すると、全然酔いが回らないのです。
普通なら2杯程度で軽く酔っぱらうのですが、この時は5杯飲んでも全然余裕です。
最終的には700mLの瓶を空けてしまいました。
そして、次の日は二日酔いにもならず、目覚めも良くて快適に過ごす事ができました。
次に家で1日中引きこもってお酒を飲んでみました。
家から一歩も出ないまま夕食を迎えて、同様にウィスキーを飲みます。
すると、今度は1杯程度で酔いが回ります。
2杯飲むとかなりベロベロになりましたが、
実験のため同じ量を飲むのを目指して頑張ります。
しかし、1/2飲んだ当たりで気分が悪くなり、
頭痛がしていつの間にか眠ってしまいました。
朝気が付くと頭がガンガンして完全な二日酔いとなり、
お昼過ぎまで起き上がれませんでした。
こんなにも差が出るものかと驚いたものですが、
本当にこれ位体調に変化が起こるものなのです。
ちなみに、僕は遺伝的にアルコール分解能力が高い事がわかっているので
こういう実験が平気できますが、普通の人は相当体調を崩す可能性があるので
無茶はしないで下さい。
何はともあれこういう事実があって、
僕は酒をどうせ飲むなら筋トレの日にした方が良いと言っています。
別の言い方をすると、
「お酒を飲みたいならその前に筋トレをしておきなさい」
とも言えます。
運動後は48時間以上、筋肉が活性化しているので、
お酒の毒がそこまで問題にはならないからです。
最初に言った通り、アルコールは筋トレの効果を妨げるので
筋トレの後にお酒を飲むべきではないと言われますが、
健康面から考えればむしろお酒を飲むなら筋トレの後です。
そして、運動しない日は飲むべきではないのです。
何となくわかって頂けたでしょうか。
それでは、飲むなら何が良いか?
勿論、飲まないにこした事はありませんが、アルコール好きで
どうしても飲みたいという人はどんな種類のお酒を飲むべきか?
これは昔から言っている事なのですが、「蒸留酒」が良いと思っています。
知らない人のために言いますが、お酒には
「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」「カクテル」
という4種類があります。
醸造酒とは穀物や果実を酵母によりアルコール発酵させて作られたお酒で、
日本酒、ビール、ワインなどです。
蒸留酒は原酒(醸造酒)を蒸留したもので、
焼酎、ウイスキー、ブランデーなどです。
混成酒はリキュールとも呼ばれますが、
蒸留酒に果物や砂糖などを加えて味を整えたもので、
梅酒、カルーア、カシス、カンパリなどです。
カクテルは上記3つに何かを混ぜたもので、
カルーアミルク、カシスオレンジなどです。
そして、健康面や体型という事を考えると、
飲むなら蒸留酒にすべきと思っています。
理由の1つは尿酸値の問題。
最近は健康診断で尿酸値が高く出たなどで悩んでいる人も多いようですが、
尿酸値が高くなると痛風になると言われています。
一応前提として言っておきますが、アルコールは全般尿酸値が上がります。
代謝過程でどうしても出て来るものなので、
どんな種類のお酒だろうが痛風には良くありません。
しかし、尿酸の素になるプリン体を含むかどうかで
その勾配は変わってくると考えられています。
プリン体はビールに最も多く含まれていて、
焼酎、ウイスキー、ブランデーなどの蒸留酒にはあまり含まれていません。
ですから、健康面から考えた場合、
尿酸値の上がりにくい蒸留酒を飲むのが賢い選択ではないかと思います。
もう1つの理由は太る問題。
醸造酒、混成酒、カクテルはアルコールだけでなく、
糖質、脂質、タンパク質を含むため簡単に太ります。
それこそ缶ビール1本飲めばご飯一杯食べた分と同じ位は太ってしまうでしょう。
いくら筋トレでカロリーを消費したとしても、
その後にビールをガブ飲みしたら全て帳消しなのです。
しかし、蒸留酒の成分はアルコールと水だけです。
他の栄養成分は一切入っていないので、基本的に太る事はありません。
「アルコールもエネルギーだから太るのでは?」
と思われるかもしれませんが、アルコールは他の
3大栄養素とは違って太り辛い性質があります。
よく「エンプティカロリー」なんて言われるのですが、
簡単に言うと体に蓄積し辛いエネルギーなのです。
商品券のようなものだと思って下さい。
商品券で物を買うとお釣りが貰えないと思いますが、アルコールの
エネルギーも同様にお釣りが貰えなくて留めておく事ができないのです。
例えば、今800のエネルギーが必要だといます。
この時、糖質や脂質などを使って1000をつぎ込むと
200のお釣りが返ってきます。
そして返ってきた200はいつかまた使う日に備えて
「贅肉」という形で貯蔵されます。
3大栄養素は「現金」のようなもので、
使われなかった分はしっかり貯蓄できるのです。
一方、アルコールは商品券ですから、
1000当てても200は返ってきません。
完全な使い切りなのでお釣りは一切出ず、貯蓄する事が不可能なのです。
具体的に言えば、必要な分だけ酢酸が使われ、
不要分は徐々に体から強制退去させられます。
ですから、蒸留酒は非常に太り辛いと言えるのです。
ただ、全く太らないわけではないので注意して下さい。
例えば、蒸留酒と一緒にご飯を食べていた場合、蒸留酒のエネルギーが
優先して使われてしまえば、余ったご飯のエネルギーは贅肉になります。
つまり、その他の食事のエネルギーの行き場を奪う事で、
間接的に太らせてしまう事は考えられます。
それに完全に蓄積されないかと言えば、そんな事はありません。
アルコール量が多かったり、その他の食事でのエネルギー量が多かったりで
酢酸が処理しきれないと、酢酸は再び肝臓に戻って脂肪に合成されてしまいます。
その結果、脂肪肝などが起こってしまうわけですが、いずれにせよ、
完全に太らないわけではないので節度を持って飲むように心掛けねばなりません。
ちなみに、僕が先程の実験でハイボールを選んだのもこういった背景があります。
尿酸値が上がり辛く、太り辛い蒸留酒のウィスキーからハイボールを作りました。
ハイボールはウィスキーのソーダ割りです。
勿論、割るソーダにジンジャーエールなどを使ってしまえば
糖分が入って意味が無くなりますが、純粋な炭酸水で割れば
エネルギーは蒸留酒と何ら変わりません。
喉越しがシュワっとするためビールの代替飲料にもなりやすく、
お酒が止められない人にハイボールはなかなかお勧めです。
勿論、ピタッと止められたら一番いいですが、難しい方はこうやって
少しずつ食生活を改善していくのが良いのではないかと思います。
という事で長くなってしまいましたが、最後に酒のルールを纏めておきましょう。
1.酒はできるだけ飲まない。
2.飲むなら筋トレ後に蒸留酒。
以上2つのルールを覚えておいてもらえたら、
酒とうまく付き合っていけるのではないかと思います。
そんなわけで今日は終わりたいと思います。
PS:
メルマガではもっと有意義なお話をしていますので、
良かったらこの機会に登録してみて下さい。
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コメント20件
南米放浪人
何時も素晴らしいアドバイス、感服の至りです。ラスカル
う〜ん。筋トレ後に全然酔わないので検索してたらヒット(^^;;勉強になりました。バブラ大佐
いや〜 私とまったく同意見。 うれしいです。ラン30分5km、筋トレ30分。部位を変えて毎日です。もちろんアルコールも毎日、休肝日なしですが、運動するようになって血液検査良好です。ただビール飲みまくりを蒸留酒に変えたいと思います。このサイト最高ですピロキ
素晴らしい!勉強になりましたー!ゴン
何か安心しました。お酒はやめられないので週4日はラン30分筋トレ30分の後に芋か麦焼酎ロックを4~5杯飲んで食事してます。せぶん
とても参考になりました!ありがとうございます!しげっくす
生きる希望が湧きましたアルコールがあると本当に心がリフレッシュできる
なのにアルコールはダメと言われると本当に辛い
だから、ここを見て本当に希望が持てました
筋トレ、アルコール継続できそうです
ジムにいって筋肉つけたいけどガリガリだから行くのが恥ずかしい どうしたらいいの [777715876]
[…] ! https://urban-ascetic.com/meal/alcohol-training/ […]io
助けられんした。筋トレは週6日~7日やっていますが、アルコールを摂取すると体重が一気に2kgぐらい太ってしまいます。
止められれば一番いいのですが、どうしてもやめられません。一日でウイスキーボトル半分から一本空けてしまうことがあり、とても罪悪感でいっぱいです。
そんな状態が2~3日続くと、体重が5日間で8kg近くリバウンドしてしまいます。それを元に戻すのが大変で・・・。
糖質制限をしながらのトレーニングなので、とても辛いのです。アルコールを摂取すると筋トレが無駄になるというのが一般の見解でしたので、飲む日はやりませんでしたが、今度からは筋トレして飲んでみます。
初心者
筋トレやった後確かにいつもより酔わないと感じてました。とても勉強になりました、ありがとうございます。瑶華
私は専ら日本酒好きの女です。女ですが毎日筋トレをかかしま
せん。食べるのが大好きだから
多少食べすぎても太らないよう
代謝をあげるためにしています
。筋トレの効果がなくなるから
日本酒みたいな醸造酒はだめだ
よ、ってよく聞いていましたが
筋肉量は着実に増えています。
そして、二日酔いとは無縁です
。寝覚めもよく、日本酒のんで
も問題ないじゃないか!と思っ
て調べてみたところこちらの記
事にたどりつき拝見させていた
だきました。
お酒もやめられない、筋トレは
やめる気がない。でも効果なく
なるって言われると、自分の体
で問題はないとわかっていても
不安。
拝見させていただき、勉強にな
りました。他所はあたかも事実
のように間違った事が書かれて
いるサイトはたくさんあります
(とくにダイエット)。
鵜呑みにせずこちらの記事のよ
うな他の記事とはまた違ってい
て、でも、うんうん、私もそう
思う!と思えるような記事など
も見ながら自分に合うやり方を
見つけていきたいと思えました
。読んでよかった!ありがとう
。
がんばってください!
自分も運動後には酔わないので検索してみたらココにこれました飲みすぎるのは良いとは思わないけど、運動後には気持ちよく酔いたいですよね
ありがとう!
2年か筋トレをして
2年間毎日筋トレしてきましたがこの2週間程毎日少量でうが飲むようになり
体調が悪いです。今までの週一の酒に戻そうと思ってます
筋トレ後の酒は旨いが体調が悪いじゃダメですよね
酒は一つも良くないことがわかりました
確証バイアス
酔ってるときに筋トレしたら、ダブルで肝臓に負担かけませんか?飲んべトレーニーに朗報。酒は筋トレの後にこそ飲むべし!! | 高血圧の50代が筋トレで血圧正常を目指すブログ
[…] こちらのこの記事。「酒と筋トレ」 […]筋トレした日ほど二日酔いになりにくい?筋トレと酒の関係を考察 | 10分細マッチョ
[…] これについて、とても参考になる考察をしている記事を見つけました。 (Tokyo仙人ジム:酒と筋トレ) […]酒と筋トレ | Tokyo仙人ジム|生活習慣病と無縁の健康診断で褒められる体を作る
[…] 酒と筋トレ | Tokyo仙人ジム 2014年5月5日 … 立派なエネルギー源となるのです。 ただ、このエネルギーには1つ問題があります。 アルコールの代謝物である酢酸は他のエネルギーとは違 […]らもん
確かに筋トレした後に飲むと酔い辛いです。筋トレ後酒飲むなという情報が一辺倒な中で、このような考察は非常に興味深いですね。
ごんべ
アルコールを摂取するとテストステロンの減少と筋肉を分解してしまうコルチゾールの増加があるといわれていますがそれらを踏まえてなお筋トレ日と飲酒日は違う日よりも同じ日を推奨されますか?筋トレ後の飲酒は筋肉に悪影響を与える(モテにも影響が) | モテボディメイクアカデミー
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